暗い超新星の正体は爆破しそこねた不発弾?
【2012年11月22日 シカゴ大学】
真の明るさがほぼ全て一定であるため、銀河までの距離の指標として活用されるIa型超新星。だが中には、通常の10〜100分の1の明るさしかない特異なものも見つかっている。米シカゴ大学などのシミュレーション研究により、こうした現象は中途半端な爆発が原因であることが示された。
Ia型超新星とは、白色矮星(恒星が核燃焼をほぼ終えて収縮した高密度の天体)と呼ばれる天体の爆発により起こる現象だ。そのほとんどは絶対的な明るさが一定なので、所属する銀河までの距離を推定するのに利用される。
だがここ10年、珍しいタイプのIa型超新星が20個ほど観測されている。非常に暗く通常の10〜100分の1程度の明るさしかないため見つけにくいが、実際にはIa型超新星の15%を占めると見積もられている。
米シカゴ大学のGeorge Jordanさんらの研究によれば、こうした特異Ia超新星の正体は、爆発しそこねた不発超新星だという。Ia型超新星爆発をスーパーコンピューターでシミュレーションしたところ、通常より星の核の中心に近いところで着火した場合に余分な燃焼が起こる。そのために星が大きく膨らみ、温度や圧力が十分上がりきらないので、星内部を伝播する爆轟波(爆発的な燃焼の広がり)が発生しないというのである。白色矮星は爆破をまぬがれ原型を留めるが、星の一部は燃えて放出される。
こうした「不発」シナリオが、珍しいタイプのIa超新星の元になると考えられる。シミュレーションでは、放出された星の一部が表面に降り積もることで通常の白色矮星では見られない重い元素が作られたり、非対称な爆発により伴星との重力関係が変わり、時には銀河を抜け出してしまうほどのスピードで吹き飛んだりと、予想外の結末が見られた。
どれも聞いたこともない奇妙な白色矮星ばかりだったが、チームの一人Hagai Peretsさん(イスラエル技術研究所)が調査したところ、過去の観測報告の中にはこれらのシナリオで説明がつくものも見つかった。
「この新しいモデルは、予測される実に様々な結末を示しています。一見無関係なものも含めて、色々な謎の解明にもつながるかもしれません」(Peretsさん)。