小爆発後のIa型超新星爆発を初めて観測
【2012年8月30日 カブリIPMU】
米研究チームによるIa型超新星の観測から、超新星爆発前の天体が小規模な爆発を繰り返していたことがわかった。Ia型超新星のもととなる天体の正体に、いくつかのバリエーションがあることをうかがわせる重要な発見だ。
カブリIPMU(東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構)のRobert Quimbyさんを含む「パロマー山天文台自動サーベイプロジェクト」(PTF)チーム(米カリフォルニア州)が、何度かの小爆発を経験した白色矮星がIa型超新星爆発を起こしたという初めての観測結果を発表した。
白色矮星とは、太陽程度の質量の恒星が一生を終えた後に残る高密度天体だ。この白色矮星ともう1つの天体との連星系で起こる熱核融合による爆発が「Ia型超新星」として観測されるものだが、「もう1つの天体」が白色矮星なのか、それとも通常の恒星など別種の天体なのかは明らかになっていない。
PTFチームは2011年1月16日、約6億光年先の銀河に現れた超新星PTF11kxを発見し、その光を1か月以上にわたって追い続けた(画像1枚目)。その光の成分から、超新星の周囲に複数のガスの層があり、その層を通して光が届いていることがわかった。これらのガスの層は、超新星の前の段階で起こった小規模な爆発で吹き飛ばされたものと考えられる。
この小規模な爆発は、白色矮星の伴星である赤色巨星(一生の終盤を迎え、赤く膨れ上がり低温になった恒星)から白色矮星にガスが供給されることで起こる(画像2枚目)。
「新星」と呼ばれるこの現象は天体を吹き飛ばすほど大規模なものではなく、降り積もったガスを吹き飛ばしてまた同じ現象を繰り返す。吹き飛ばす量より降り積もる量の方が多ければ、白色矮星がガスで溢れていき、やがて限界に達すると「超新星爆発」に至って連星系はその最期を迎える。
だが同様のデータはこれまで見つかっておらず、他の超新星でも、もし赤色巨星の伴星があるなら観測されていたはずのもの(爆発前や爆発後の伴星)が観測されていないという例もある。これらの観測結果から、Ia型超新星爆発を起こす伴星にはいくつかの種類があることが推察される。
Ia型超新星は非常に明るいため宇宙の遠方で起こったものでも観測することができ、またどこで発生したものでもほとんど同じ明るさで輝く「標準光源」として知られる。宇宙の加速膨張もこのIa型超新星の観測から判明した。そのため、Ia型超新星の起源がいくつかのバリエーションを持つということは非常に大きな意味を持つ。さらに多数のIa型超新星を観測し、伴星の情報を集めていくことが重要になるだろう。