観測史上最も明るい高速電波バースト

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高速電波バーストとは、数十億光年彼方で発生する謎めいた電波フラッシュだ。2015年に観測された現象は、これまでの高速電波バーストのうちで最も明るく、最も正確に位置が特定できたものとなった。

【2016年11月21日 Caltech

米・カリフォルニア工科大学のVikram Raviさんと豪・カーティン工科大学のRyan Shannonさんたちの研究チームは、つる座の方向に位置する天の川銀河内のパルサー(高速で自転し電波などを放射する中性子星)を電波観測でモニタリングしていた際に高速電波バースト「FRB 150807」をとらえた。

高速電波バースト(FRB)はこれまでに18例しか観測されたことがない珍しい現象だ。そのほとんどは一度バーストを起こしただけで繰り返し光ることはなく、しかも広大な領域を観測する望遠鏡によって検出されてきたために、バーストの起こった方向に望遠鏡を向けることは困難であった。しかしFRB 150807は非常に明るく、そのおかげで精度よく発生源の位置が確定された。

Raviさんたちによると、毎日2000~1万のFRBが発生しており、そのうち10個に1つの割合でFRB 150807と同程度の明るさのものがあると計算されている。

FRB 150807は親銀河中の物質によってわずかに歪められているだけだとみられている。これは、FRBの方向にある銀河間空間の物質の乱雑さは理論の予測内の範囲ということを示しており、銀河間物質の乱れに対する初の直接的な知見だ。

周波数ごとのFRB 150807の強度
電波の周波数ごとのFRB 150807の強さ。赤が低周波で青が高周波。横軸は時間の経過を表す(提供:Courtesy of V. Ravi/Caltech)

どのようなメカニズムでFRBが放たれているのかはまだわかっていないが、今回の発見は、銀河間に存在する微かな網の目構造を理解する一歩となりそうだ。「FRBは数十億光年彼方で起こっているので、その天体と地球との間の宇宙を研究するために役立ちます。目に見える物質の半分ほどは銀河間空間に薄く広がっていると考えられていて、望遠鏡では通常見ることはできませんが、FRBを使って調べることが可能です」(Raviさん)。