アルマ望遠鏡、惑星の種の大きさと、その成長に迫る
【2016年12月6日 アルマ望遠鏡】
太陽のような星は宇宙に漂うガスと塵が寄り集まることで誕生した。こうした星が若いころ、その周囲にはガスや塵の円盤(原始惑星系円盤)が広がっており、その中でガスや塵が集まって地球や木星のような惑星が作られたと考えられている。しかし、その細かい過程まではまだ明らかになっていない。
たとえば、地球は主に岩石でできた惑星だが、もともと1μm程度であった塵の粒子がどのようなペースで合体成長し直径1万kmを超える岩石惑星になったのかという疑問は未解決だ。惑星の形成過程を理解するには、塵の成長の様子を明らかにする必要がある。
ドイツ・フンボルトフェロー/ハイデルベルク大学/国立天文台の片岡章雅さんたちの研究チームは、塵の成長を研究する鍵として、電波の「偏光」に初めて注目した。
惑星誕生領域で観測される電波の偏光は、磁場のはたらきで整列した塵が電波を発することで生じると考えられてきたが、これまでの観測では偏光は検出されていなかった。
一方、片岡さんは、塵が放つ電波を周りの塵が散乱することでも偏光が生じ得ることを理論的に予測していた。さらに、散乱による偏光の現れ方は磁場によるものとは異なる特徴的な形状を示すこと、偏光の強度から塵粒子の大きさを従来よりも精度よく見積もることができることも予測しており、これらを実証するためにアルマ望遠鏡を使った観測が行われた。
アルマ望遠鏡を使って、おおかみ座の方向450光年彼方の若い星HD 142527を観測したところ、予測と合致する偏光パターンが検出された。磁場によって整列した塵が放つ偏光では放射状の偏光パターンが、塵が起こす散乱による偏光ではそれとは90度向きが異なる偏光パターンが現れることが理論的に予言されていたが、観測では実際に、散乱に起因すると考えられる偏光パターンが発見された。
さらに偏光の強度から、偏光を起こすもとになる塵粒子の大きさが最大でおよそ150μmであることも明らかになった。偏光観測に基いて塵粒子の大きさを導いた初めての例だ。この値は、これまで原始惑星系円盤に存在する塵の大きさとして推測されていた値の1/10よりも小さなものである。
「従来は、塵粒子が球形であると仮定し、そうした塵から放射される電波を想定して大きさを推定していました。しかし、塵粒子が電波を散乱することで生じる偏光のデータから見積もられる大きさは、まったく異なります。従来の仮定が間違っている可能性を示しています」(片岡さん)。一つのアイディアとして研究チームでは、塵が単純な球形ではなく小さな塵粒子が複雑に連なった構造をしているのではないかと考えている。
今回の観測からは、円盤内で偏光の強度が大きく異なる場所があることも明らかになった。HD 142527の円盤では、東側で偏光度が高い一方、それ以外の場所での偏光度は低くなっている。こうした偏光度のムラは現在のところ説明がつかず、今後の研究での解明が待たれる。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡: アルマ望遠鏡、惑星の種の成長に迫る
- The Astrophysical Journal Letters: Submillimeter Polarization Observation of the Protoplanetary Disk around HD 142527 論文
〈関連リンク〉
- アルマ望遠鏡: http://alma.mtk.nao.ac.jp/
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