40光年彼方に地球サイズの7惑星
みずがめ座の方向約40光年彼方に位置する恒星「TRAPPIST-1」には昨年5月に、3つの系外惑星が見つかっていた(参照:アストロアーツニュース「超低温の矮星の周りに、生命が存在しうる地球サイズの惑星3つを発見」)。
ベルギー・リエージュ大学のMichaël Gillonさんたちの研究チームがヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡「VLT」やNASAの赤外線天文衛星「スピッツァー」などによって、惑星がTRAPPIST-1の手前を通過して主星が暗くなる様子(トランジット)を詳しく観測したところ、この星には惑星が7つあることが明らかになった。1つの星の周りに7つもの系外惑星が見つかったのは最多(タイ)記録だ。
スピッツァーの観測データの解析から惑星の大きさが測定され、7惑星すべてが地球サイズであることがわかった。さらに内側の6つについて質量や密度を推定したところ、すべて岩石惑星らしいことが示された。
7つの惑星すべてに液体の水が存在する可能性があり、とくにそのうち3つはハビタブルゾーン(惑星表面で水が液体で存在しうる範囲)に位置しているため可能性がさらに高いという。中心星であるTRAPPIST-1は、質量が太陽の8%ほどで表面温度は摂氏2300度程度という超低温の赤色矮星だ。そのため、中心星から遠く離れると水が凍ってしまうので、水が液体の状態であるハビタブルゾーンは中心星に非常に近いところになる。
また、惑星が中心星に非常に近いところに存在しているため、潮汐力によって惑星の自転と公転が同期しているかもしれない。その場合、惑星は常に同じ面を中心星に向けていることになり、昼夜の入れ替わりがなくなってしまう。すると、昼側から夜側に向かって強い風が吹くなど、地球とは全く異なる気象となるだろう。
今後の観測では、とくに惑星の大気の存在やその成分を調べることで、液体の水や生命の存在可能性についてさらに詳しく迫ることになるだろう。2018年打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡では、水やメタン、酸素、オゾンなど惑星の大気を構成する様々な成分を調べ、さらに惑星の温度や表面の圧力など、生命が存在できる環境かどうかに関する鍵となる要素も分析する予定だ。
〈参照〉
- NASA: NASA Telescope Reveals Largest Batch of Earth-Size, Habitable-Zone Planets Around Single Star
- ESO: Ultracool Dwarf and the Seven Planets
- Nature: Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1 論文
〈関連リンク〉
- TRAPPIST Telescope network: http://www.orca.ulg.ac.be/TRAPPIST/Trappist_Main_Fr/Home.html
- NASA Exoplanet Exploration: https://exoplanets.nasa.gov/
- 赤外線天文衛星「スピッツァー」: http://www.spitzer.caltech.edu/
- ヨーロッパ南天天文台(ESO): http://www.eso.org/
- The Extrasolar Planet Encyclopaedia: http://exoplanet.eu/
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
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