酸化チタンの雪が降る系外惑星
【2017年11月1日 NASA】
こと座の方向1730光年彼方にある系外惑星「Kepler-13 A b」は木星の7倍ほどの質量を持つ巨大な惑星で、中心星の周りをわずか2日弱ほどで公転しているホットジュピター(中心星のそばの巨大ガス惑星)である。中心星にとても近いため、潮汐固定が起こって惑星は常に同じ面を中心星に向けており、昼側の温度は摂氏2700度ほどにも達している。
米・ペンシルベニア州立大学ユニバーシティパーク校のThomas Beattyさんたちの研究チームが、ハッブル宇宙望遠鏡を使ってこの系外惑星を観測したところ、惑星の大気の温度が上層ほど低いというデータが得られた。通常、ホットジュピターでは大気中の酸化チタンが光を吸収し熱として再放射するため、高度が高いほど惑星大気の温度も高くなるので、これは予想外の結果だった。実際、過去に行われた他のホットジュピターの観測では上層大気の温度上昇が見られていたのだ。
Beattyさんたちはこの発見について、酸化チタンが惑星の昼間側の大気から取り除かれたためと考えている。強力な風によって酸化チタンのガスが夜側へ運ばれ、凝縮して結晶質の薄片となって雲を作り、雪となって降っているというのだ。酸化チタンの雪は惑星の強い重力によって大気の下層に留められている。こうした「コールドトラップ」と呼ばれる降雪プロセスは、理論的には予測されていたが、観測から確認されたのは初めてのことである。
「ホットジュピターの大気中でどのようにして凝縮が起こって雲が形成されるのかや、大気組成へ重力がどのような影響を及ぼすのかなどがわかりました。おそらく、ほとんどのホットジュピター上で降雪プロセスは発生するのですが、Kepler-13 A bに比べて表面重力が弱いため、酸化チタンは降らずに惑星の昼間側へと追いやられてしまい、気体に戻るのです。惑星に目を向ける際には、温度がどれほど高いかということだけでなく、惑星の重力がどのようなものであるのかについても、知る必要があります」(Beattyさん)。
「私たちはホットジュピター上の大気の研究を様々な方法で行っていますが、これは地球のような惑星の大気を調べるための技術検証を行っているとも言えます。ホットジュピターの大気の働きなどを知ることは、観測が難しく大気がもっと複雑な特徴を持つような小さな惑星を調べる際に役立つことでしょう」(Beattyさん)。
〈参照〉
- NASA:Hubble Observes Exoplanet that Snows Sunscreen
- The Astronomical Journal:Evidence for Atmospheric Cold-trap Processes in the Noninverted Emission Spectrum of Kepler-13Ab Using HST/WFC3 論文
〈関連リンク〉
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