ケレスに過去の海の痕跡

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準惑星ケレスでは水和鉱物が広範囲に広がっており、過去に全球規模の海が存在していた可能性が示された。また、地殻の下に柔らかく変形しやすい層の存在が示唆され、残った液体の痕跡ではないかと考えられている。

【2017年11月2日 NASA JPL

準惑星「ケレス」には、過去に全球的な海が存在していた可能性が示唆されている。その海がどうなったのか、まだケレスには液体が残っているのか、2つのチームが探査機「ドーン」の観測データを利用した研究を行って、これらの疑問に関する成果を発表した。

NASAジェット推進研究所のAnton Ermakovさんたちの研究は探査機の軌道のわずかな変化を追跡することでケレスの形状と重力を示すデータを取得し、そこからケレスの内部構造や組成を調べた。そして、現在も(少なくともつい最近まで)地質学的な活動がケレスで起こっている可能性を支持する結果を得た。

ケレス上の3つのクレーター「オッカトル」「カーワン」「ヤロデ」と孤独な高い山「アフナ山」は、すべて重力異常と関連がある。つまり、ケレスのモデルと実際の観測とで差があり、その差は地下の構造に関係があるかもしれないという。「ケレスでは、目立った地形と関連のある重力異常がきわめて多いのです」(Ermakovさん)。

ケレスの重力場を色で示したマップ
探査機「ドーン」がとらえたケレス(左)と、ケレスの重力場を色で示したマップ。(赤)ケレスの内部構造モデルによる予測より重力が強い領域、(青)重力がより弱い領域(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA)

Ermakovさんたちは地殻の密度が比較的低く、岩石よりも氷の密度に近いことを発見した。しかし別の研究では、ケレスの硬い地殻を主に構成する物質として氷は柔らかすぎることが示されている。

どうしてケレスの地殻は密度が氷のように低いにも関わらず、氷よりも頑丈なのだろうか。この謎を解くため、米・ハーバード大学のRoger Fuさんたちの研究チームはケレスの表面がどのように時間経過で進化してきたのかに関するモデルを作った。主に頑丈な岩石から成る地殻は、太陽系の年齢である45億年以上変化することはないが、氷や塩を豊富に含む弱い地殻はその間に変形するという具合に、天体の地形の進化を調べると内部組成を知ることができる。

ケレスの地殻の動きをモデル化することにより、Fuさんたちは、地殻を構成しているのは氷や塩、岩石であることを発見した。さらに、水分子が気体分子を取り囲むようにかご状構造を作って結晶化した物質である水和包接化合物も含まれると考えられている。水和包接化合物は、密度は水の氷とほぼ同じでありながら、強さは100倍から1000倍もある。

過去ケレスの表面には、もっとはっきりした地形が存在していたが、時間の経過とともに平らになってしまったと考えられている。山や谷の平坦化には、変形しやすい層の上に強度の高い地殻があるという構造が必要だが、この変形しやすい層には少量の液体が含まれているとFuさんたちは解釈している。

研究チームは、かつてケレスに存在していた海の大部分は現在凍っていて、氷や包接水和物および塩といった形で地殻の中に残っており、40億年以上もの間その状態が続いてきたと考えている。もし液体が今も底に残っていれば、海は完全に凍ってはいないことになり、ドーンがケレスに到着する前に発表された複数の熱進化モデルと一致する。つまり、ケレスの奥深い内部に昔の海の名残である液体が含まれているとする考え方が支持される。

「知れば知るほど、ケレスは複雑でダイナミックな世界であることがわかってきています。過去ケレスには、大量の液体の水をたたえた海が存在していたのかもしれません」(ドーン・プロジェクトサイエンティスト Julie Castillo-Rogezさん)。

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