小さな中心星の周りに巨大ガス惑星NGTS-1 b
【2017年11月8日 ヨーロッパ南天天文台/RAS】
チリ・パラナル天文台に設置されている「次世代トランジットサーベイ(NGTS)」は口径20cmの望遠鏡12台を並べた観測設備だ。惑星が中心星の前を横切ることで影になり、恒星の明るさがわずかに暗くなる「トランジット現象」を利用して、系外惑星を捜索している。
英・ウォーリック大学のDaniel Baylissさんたちの研究チームはNGTSを使って、何か月間も夜空のあちこちの領域をモニター観測し続けてきた。そして、はと座の方向約730光年彼方に位置するM型矮星「NGTS-1」の明るさが2.6日周期で変わることを発見し、周囲を回る惑星の存在が示された。
観測で得られたデータを使って惑星の軌道を追跡し、中心星の視線速度の計測結果から惑星の大きさや質量などを計算したところ、半径が木星の1.3倍、質量が0.8倍であることがわかった。ただし木星とは異なり、系外惑星NGTS-1 bは中心星に非常に近く、その距離は太陽から地球までのわずか3%しかない。公転周期は変光周期と同じ2.6日なので、NGTS-1 b上の1年は地球上のわずか2.6日で終わってしまう。
惑星の大きさとは対照的に中心星は小さく、半径、質量共に太陽の半分しかない。しかし現在の惑星形成理論では、質量の小さな星の周囲に大きな惑星は存在しないと予測されている。質量の小さな星の周囲で岩石惑星は形成されても、木星サイズの大きな惑星形成に必要な材料がないとされているからだ。
「NGTS-1 bの発見は、全てが驚きでした。このような大きな惑星は小さな星の周りには存在しないと考えられていたからです。重要なことは、この種の惑星が天の川銀河内でどれほど普通の存在なのかを明らかにするということです。それが今後の私たちの挑戦であり、NGTSはそのための観測設備です」(Baylissさん)。
「モンスター級の惑星であるにもかかわらず、NGTS-1 bの発見は困難でした。理由は、中心星がとても小さく暗いためです。この赤色矮星のように小さな星は、実は宇宙では最もありふれた存在ですから、その周りにまだ見ぬ巨大惑星がたくさん存在するかもしれません。約10年の歳月をかけて開発したNGTSで予想外の種類の惑星が発見でき、感激しています。この他にもエキサイティングな新惑星を発見できることを楽しみにしています」(ウォーリック大学 Peter Wheatleyさん)。
〈参照〉
- ヨーロッパ南天天文台:New Exoplanet Survey Finds its First Planet
- RAS:Monster’ Planet Discovery Challenges Formation Theory
- MNRAS:NGTS-1b: A hot Jupiter transiting an M-dwarf 論文
〈関連リンク〉
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