磁場が描き出す、天の川銀河中心のガスや塵のフィラメント構造
【2018年2月27日 RAS】
私たちの天の川銀河の中心には、太陽の約400万倍もの質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*(エー・スター)」が存在しており、その重力に引かれてブラックホールの周囲では恒星やガス、塵が渦を巻くように動いている。
この領域には大量のガスや塵が存在しているため、可視光線はブロックされてしまい観測することができない。そのため、天の川銀河の中心領域の観測には、赤外線やX線、電波が利用されている。 英・オックスフォード大学のPat Rocheさんたちの研究チームは、スペイン領カナリア諸島ラ・パルマ島にあるカナリア大望遠鏡に設置された観測機器「CanariCam」を使って天の川銀河の中心を観測した。CanariCamは赤外線撮像器と偏光デバイスを組み合わせた装置で、磁場と関連する特定の特性を持った光だけを通した観測が可能である。
RocheさんたちがCanariCamの観測から作成した赤外線マップは、いて座A*の周囲2光年四方をカバーしたものだ。銀河中心領域の赤外線の強さがわかるだけでなく、暖かい塵の粒子や高温のガスからなる長さ数光年のフィラメント状構造内の磁力線をたどることができる。
マップには、大きく目立つフィラメント状構造が、この領域に存在する明るい星々をつないでいる様子が見える。これらの星からは強い恒星風が吹いているが、磁場によってフィラメントは固定されており、風に流されることなく動かずに存在している。他の場所では、磁場とフィラメントはあまりそろっていないため、流れ方によっては一部の物質はブラックホールの重力にとらえられて吸い込まれていくかもしれない。
今回の観測成果は、銀河中心領域における明るい星々とフィラメント状構造との関係について詳しい情報をもたらすものだ。Rocheさんたちは今後、天の川銀河の中心をより広範囲にわたってCanariCamで観測し、磁場とガスや塵の雲との関連性を調べていきたいと考えている。
〈参照〉
- RAS News&Press:Magnetic field traces gas and dust swirling around supermassive black hole
- MNRAS:The Magnetic Field in the central parsec of the Galaxy 論文
〈関連リンク〉
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