赤色矮星を巡る系外惑星の脅威はX線
【2018年4月9日 EWASS and NAM 2018】
1990年代以降、これまでに4000個近い系外惑星が発見されている。そのうち、大きさが地球サイズで、しかも中心星から程よい距離にあって液体の水が表面に存在しうる「ハビタブルゾーン」に位置するする惑星は、ほんの一握りしかない。
地球サイズの惑星候補の多くは、太陽に比べてはるかに小さな低温の星である赤色矮星の周りを回っている。そのため、赤色矮星のハビタブルゾーンは、地球から太陽間の距離よりもずっと中心星に近い。赤色矮星からは強いX線が放射され、表面で大規模な爆発現象(フレア)や大量の荷電粒子などを放出する「コロナ質量放出(CME)」が頻繁に起こると考えられているため、生命の存在にとってはこれらが問題となる。
赤色矮星の周りのハビタブルゾーンに位置する惑星が受けるリスクを明らかにする目的で、独・チューリンゲン天文台のEike Guentherさんらの研究チームは、フレアが起こりそうな複数の低質量星を集中的にモニタリング観測した。
彼らは2018年2月に、しし座の方向16光年の距離に位置する赤色矮星「しし座AD星」で巨大なフレアを観測した。しし座AD星から300万kmの距離(地球から太陽間の距離の50分の1)には巨大惑星が存在することが知られており、さらに地球サイズの惑星も、より外側に位置するハビタブルゾーンの中に存在するかもしれないと考えられている。
Guentherさんたちは、このフレアがしし座AD星系の巨大惑星や未発見の惑星にどんな影響を及ぼしたのかについての研究を進めているが、これまでの調査によると、巨大惑星にはフレアの影響は見られず、またこのフレアはCMEを伴うものではなかったことが示唆されている。CMEは小さな惑星の大気をはぎ取る役割を果たすと考えられているため、ハビタブルゾーンに存在する生命にとっては、この結果は良い知らせだ。今回のモニタリング観測の結果から、小さな星ではCMEはそれほど一般的な現象ではないと研究チームでは考えている。
ただし、フレアに含まれるX線放射は危険だ。Guentherさんたちによると、X線は地球サイズの惑星の大気を通り抜けて惑星表面まで到達するという。陸上の生命はフレアのX線によって深刻な影響を受けるため、生き残れるのは海の中の生命だけとなるかもしれない。
「多くの研究者によって、地球に似た惑星の探索や、『この宇宙には私たち人類しか存在しないのだろうか』という古くからの問いに答えるための取り組みが進められています。質量の小さな恒星は宇宙に最も多く存在しますが、このタイプの恒星の周囲に存在する惑星は、中心星で時おり発生する硬X線アウトバーストの影響を受けるため、生命(少なくとも陸上の生命)にとっては決して素晴らしい場所ではないということを今回の結果は示しています」(Guentherさん)。
一部の研究者は、強い放射線を伴うフレアによって惑星のオゾン層は2年間で94%まで激減する可能性があり、こうしたフレアは全ての生命にとって致命的なものになりうるとしている。もしそうなら、私たちが「第二の地球」について語るのは時期尚早なのかもしれない。
〈参照〉
- European Week of Astronomy and Space Science press release:X-rays could sterilise alien planets in (otherwise) habitable zones
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