20年前の探査データから探るガニメデの磁場

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NASAの探査機「ガリレオ」が約20年前に取得した探査データから、木星の衛星「ガニメデ」の磁場に関する新たな情報が得られた。

【2018年5月10日 NASA

1989年に打ち上げられたNASAの木星探査機「ガリレオ」は、1995年に木星に到着し、2003年までの約8年間に木星とその衛星の探査を行った。

木星到着から間もない1996年、ガリレオは木星の第3衛星「ガニメデ」が固有の磁場を持っていることを発見した。地球を含め太陽系の惑星のほとんどには磁気圏が存在するが、ガリレオによる探査が行われるまでは、衛星にも磁気圏が存在するとは誰も想像していなかったことだ。

ガニメデ
探査機「ガリレオ」が撮影した「ガニメデ」(提供:NASA)

1996年から2000年までの間にガリレオはガニメデへ計6回の接近飛行を行い、複数の観測機器で磁気圏に関するデータを集めた。ガニメデの磁気圏は、木星の磁気圏という巨大な領域内に位置する独特の磁場環境を調べる機会を提供してくれる。通常、惑星の磁気圏は太陽風によって形作られるが、ガニメデの磁気圏は太陽風からは守られている。木星のプラズマによって形作られるガニメデの磁気圏は、太陽系内の他の磁気圏と異なり、軌道の前の方向に伸びた長い角のような形状となっている。

ガニメデの磁気圏のイラスト
ガニメデの磁気圏(黄色の線)のイラスト(提供:NASA's Goddard Space Flight Center/Mary Pat Hrybyk-Keith)

NASAゴダード宇宙飛行センターのGlyn Collinsonさんたちの研究チームは、ガリレオがガニメデに初めて接近飛行した1996年6月に取得したデータを見直し、ガニメデ独特の磁場に関する新たな情報を見出した。「これまで一度も公表されなかった20年以上前のデータです」(Collinsonさん)。

分析結果では、木星からのプラズマが絶えず降り注いでいるために、ガニメデの凍った表面からプラズマが吹き飛ばされていることが示された。「非常に希薄なガニメデの大気に関する情報が得られるかもしれません。ガニメデのオーロラ形成についてもわかる可能性があります」(NASAゴダード宇宙飛行センター Bill Patersonさん)。

ガニメデのオーロラを生み出すのは木星を取り囲むプラズマの粒子だ。Collinsonさんたちの研究により、ガリレオが初めてガニメデに接近した際に、偶然ガニメデのオーロラ発生領域を通過していたことがわかった。ハッブル宇宙望遠鏡による観測との比較から、ガニメデのオーロラ帯の正確な位置が絞り込まれ、この位置情報はガニメデにおけるオーロラ発生のメカニズムなどの解明に役立つデータとなる。

ガニメデのオーロラ
木星(左上)とガニメデ(右手前)のイラスト。ガニメデにはハッブル宇宙望遠鏡が観測したオーロラが描かれている(提供:NASA)

また、ガリレオは、「磁気リコネクション」が発生していた領域も偶然通過していた。磁気リコネクションとはプラズマ中で磁力線が繋ぎ変わることで、磁気エネルギーがプラズマのエネルギーとして解放される爆発的な現象だ。ガリレオは、木星とガニメデの2つの磁気圏間で発生する磁気リコネクションによって、両天体間へ押し込まれるプラズマの強い流れを初めて観測した。このプラズマ圧縮により、ガニメデのオーロラの異常な明るさが引き起こされると考えられている。

今後さらにデータ解析が進むことで、ガニメデの地下海に関する新たな手がかりも得られるかもしれない(参照:「オーロラから探る、ガニメデの地下海」)。