日本で撮影された青い低緯度オーロラの出現場所を推定

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5月11日に国内で撮影された青い低緯度オーロラの画像の解析から、発生高度や経度方向の広がりなどが推定された。青いオーロラの発生原理の解明につながる成果だ。

【2024年12月13日 電気通信大学

今年5月8日、太陽で複数の強力な太陽フレアが発生し、連続的なコロナ質量放出が観測された。これが地球に到達した10日に極めて強い磁気嵐が生じ、その影響で11日には日本でも北海道から本州まで広い地域で低緯度オーロラが観測された

低緯度オーロラは酸素原子の発光の影響で赤く見えることが一般的だが、当日はサーモンピンクに見えるようなオーロラが一晩中観測された。さらに23時30分ごろには、青く背の高いオーロラが出現した。

青いオーロラ
2024年5月11日23時30分ごろに出現した青いオーロラ。(左)石川県珠洲市で「満天星」宇佐美拓也さん撮影、(右)長野県木曽町で「木曽星の会」尾崎光宏さん撮影。それぞれ白い矢印のところに青いオーロラが見える。画像クリックで表示拡大

電気通信大学(現・スウェーデン宇宙物理学研究所)の南條壮汰さんと名古屋大学宇宙地球環境研究所の塩川和夫さんの研究チームは、石川県と長野県で撮影された青いオーロラの画像を解析し、オーロラの空間構造を調べた。

その結果、オーロラは高度400km程度まではサーモンピンク色で、それ以上は少なくとも900km程度まで青色だったことが明らかになった。また、経度方向の広がりは1200km程度と見積もられた。磁気嵐中の青いオーロラの空間構造が可視化されたのは今回が初めてだ。

青いオーロラ出現位置の推定結果
青いオーロラ出現位置の推定結果。中国から樺太にかけて青くシェードされた部分にオーロラが出現していたと考えられる(提供:電気通信大学)

青いオーロラの生成機構としては、磁気嵐で発達したリングカレント(地球を取り巻く巨大電流)から飛来する中性粒子が生成する二次電子による励起が提案されている。しかし、今回の青いオーロラで見つかった磁力線に沿う縦状の構造や、経度方向に数百kmの間隔で隔たりをもつことを、このアイディアで解釈するのは難しい。何らかの機構によって上向きに加速された窒素分子イオンがオーロラ生成に影響している可能性があるという。

今回のような観測例を積み重ねることで、青い低緯度オーロラの発生原理、さらには窒素分子イオンの磁気圏への流出過程を明らかにする糸口が見つかるかもしれない。

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