今年5月に日本で見られた低緯度オーロラは高高度、色の謎も解明

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今年5月11日に日本各所で撮影された低緯度オーロラの写真の分析により、オーロラが通常よりも高高度に現れた可能性が高いことが示された。色がマゼンタであった理由も説明されている。

【2024年11月6日 国立極地研究所

今年の5月11日に大規模な磁気嵐が発生し、日本をはじめとする世界各地で低緯度オーロラが目撃された。これを受けて国立極地研究所の片岡龍峰さんがXでオーロラの撮影を呼びかけ、それに応じた日本全国の市民から写真が寄せられた。

オーロラ
今年5月11日に(a)青森、(b)北海道、(c)中部、(d)東北で、それぞれ撮影されたオーロラの写真。画像クリックで拡大表示(提供:(a)KAGAYA、(b)~(d)市民提供)

片岡さんたちはまず、寄せられた写真からオーロラがどの高度で発光していたかを推定した。オーロラが発光している高度、緯度を様々に仮定し、それぞれについて多地点からどのくらいの高さで見えるかを見積もって、各画像に写っているオーロラの上端の仰角と比較すれば、仮定の確からしさがわかる。

解析の結果、当日のオーロラ上端の高さは1000km以上だった可能性が高いことが明らかになった。通常のオーロラの発光高度は高くても600kmとされるので、11日のオーロラはかなり珍しいものだったことになる。これほどの高高度で発生したことが、兵庫県などの緯度の低い地域からもオーロラが観測できた大きな理由だったのだろう。

オーロラの上端の仰角が求められた地点と各仰角の値
オーロラの撮影地点のうち、オーロラの上端の仰角が求められた地点と各仰角の値を示したマップ(提供:国立極地研究所リリース)

集まったオーロラ写真には、色が赤ではなく紫がかったピンク(マゼンタ)という特徴があった。これも高高度のオーロラであったことが関係していると考えられるという。当日、地上は夜であっても高高度は日射域であり、そこで「太陽光の共鳴散乱」という現象が起こっていたようだ。通常は高度1000km以上に窒素分子イオンは存在しないが、大気の加熱などの影響によって窒素分子イオンが大量に舞い上がっていたとみられる。その結果、窒素分子イオンの散乱色である青色がオーロラに加わり、オーロラがマゼンタ色になったと説明できる。

今回の研究成果は、2023年12月に発生した大きな磁気嵐の検証「北海道から目撃された異常に明るいオーロラの成因」に続き、市民科学(シチズンサイエンス)の重要性を示す一例となった。今後も、市民科学者によって、オーロラ観測や磁気嵐などの実態解明が進展することが期待される。

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