赤外線で見た深宇宙〜すばる望遠鏡9月の画像(2)〜

【1999年9月17日 国立天文台国立天文台ハワイ観測所

9月17日すばる望遠鏡の完成記念式典に合わせて、すばる望遠鏡9月の画像が一挙に3枚公開された。2枚目の画像は100億光年もの遠方に位置する宇宙の姿の画像である。

環状星雲を包む微かなハロー〜すばる望遠鏡・9月の画像(1)〜92億光年離れた電波銀河の姿〜すばる望遠鏡・9月の画像(3)〜 も合わせてご覧いただきたい。

「赤外線で見た深宇宙 すばるディープフィールド」

sdf_s.jpg(135KB)
天  体  名: すばるディープ・フィールド
使 用 望 遠 鏡: すばる望遠鏡(有効口径8.2m)、カセグレン焦点使用
観 測 装 置: CISCO (近赤外線カメラ)
フ ィ ル タ ー: Jバンド (1.25 ミクロン)、K'バンド (2.15 ミクロン)
カ ラ ー 合 成: 青 (Jバンド)、緑 (J+K'バンド)、赤 (K'バンド)
観 測 日 時: 世界時1999年4月〜6月(4/3,4,29,30; 5/1,2,6,7,8,11,27; 6/6,7,9)
露 出 時 間: 12.1時間(Jバンド)、9.7時間(K'バンド)
視     野: 約2分角
画 像 の 向 き: 北が上、東が左
位     置: 赤経(J2000.0)=13時24分21.3秒、赤緯(J2000.0)=+27度29分23秒(かみのけ座)

銀河系の円盤に対して垂直な方向は、銀河系内の星や星間塵などが少なく、それらの影響を受けにくいため、はるか遠方の宇宙の観測に適している。特にすばる望遠鏡のあるハワイからの観測の場合、銀河系の北極方向の天体はほぼ天頂を通過する。そのため大気揺らぎによる影響が少ないだけでなく、長時間にわたる観測が可能である。すばる望遠鏡では、このように遠方の宇宙に関する研究を行う特定の領域「すばるディープ・フィールド」を設け、多方面にわたる観測を進める計画である。

この画像は「すばるディープ・フィールド」の最初のデータである。銀河系の北極の方向、かみのけ座銀河団より約6度東の、一見星も何も見えない領域を、すばる望遠鏡に取り付けた近赤外線カメラ CISCO により2つの赤外線の波長帯で長時間観測し、それらの画像を合成した。その結果、赤外線の広域画像としては、最も暗い天体まで写すことに成功した。

画像中の青く暗い天体は近傍(約30億光年)にある若い小さい銀河であり、赤色の暗い天体は主に70億光年程度までに分布するかなり年老いた銀河であると考えられる。一方、白色の暗い天体は、100億光年を超える非常に遠い天体であると思われるが、それを確認するためには可視光による観測がさらに必要である。また最も赤い色の天体のいくつかは、塵に覆われたかなり特殊な天体である可能性がある。

このような赤外線画像は、天体から出た可視光が宇宙膨張により赤方偏移し、赤外線としてとらえられたものである。そのため、100億光年を超えるような遠方宇宙の研究には不可欠な情報である。実際にこの画像に写る暗い天体の多くは、100億光年を超える遠方に位置するものと考えられる。さらにこの中には、可視光では見えない、宇宙の極めて初期に生まれた天体が写っている可能性もある。今後、すばる望遠鏡の可視光の観測装置や 赤外の分光装置を用いて個々にとらえられた天体の性質を調べていくことにより、そのような宇宙初期の時代からの天体の形成や銀河の進化の様子を詳しく知ることができるものと期待されている。

※μm=マイクロメートル=1000000分の1メートル(m)


<すばる関連ニュース>
すばる望遠鏡ファーストライト
すばる望遠鏡・6月の画像
すばる望遠鏡・7月の画像
すばる望遠鏡とNHK超高感度ハイビジョンカメラによる映像
すばる望遠鏡・8月の画像
すばる望遠鏡・9月の画像(1)
すばる望遠鏡・9月の画像(3)