NASAの火星探査車が捉えた、人類が初めて見る他の惑星上での日食

【2004年3月16日 JPL News Releases

NASAの火星探査車が日食観測を行った。3月4日、オポチュニティーのパノラマカメラが、火星の小さな衛星ダイモスが太陽面を移動するようすを小さな点として初めて捉え、続いて7日には太陽面の端に衛星フォボスを捉えた。

(オポチュニィテーによる、火星で起こった太陽面通過の画像)

探査車オポチュニィテーが捉えた、火星で起こった衛星の太陽面通過。左は太陽の前を通過するダイモス、右は太陽面の端にかかったフォボス(提供:NASA/JPL/Texas A&M/Cornell)

過去の火星探査機の観測としては、火星の上をフォボスの影が動いていくようすをバイキングが観測したり、1997年にマーズ・パス・ファインダーが火星の影から出てくるフォボスを捉えたりした例がある。しかし、地球以外の惑星において、太陽の前を通過する衛星が観測されたのは初めてのことだ。

フォボスの大きさは27km×18kmほど、ダイモスはその半分ほどだ。この大きさの違いのほか、2衛星の軌道の違い(フォボスのほうが火星に近い)により、火星から見て両衛星の大きさはかなり違って見え、太陽を隠す量も異なってくる。ダイモスは点にしか見えず、フォボスは太陽面の半分ほどの大きさだ。いずれにせよ、地球で見る日食のように太陽をすっかり覆い隠せるほど大きくは見えないので、「日食」というよりも「太陽面通過」と呼ぶほうが適当だろう。

今回の観測によって、火星の衛星のより精密な軌道や軌道の変化、衛星の詳しい形状を知ることができるかもしれない。しかし、ダイモスが太陽の前を通過する時間はたった50〜60秒程度、フォボスでは20〜30秒のため、観測のタイミングはひじょうに難しい。困難ではあるが、地球にいながらにして他の惑星で起こっている日食を観測するというのは、想像するだけでもエキサイティングな経験だろう。

オポチュニティーとスピリット2台の探査車に搭載されたパノラマカメラによる衛星の観測は、引き続き4月下旬ごろまで続けられる予定になっている。