木星に新たな赤斑
【2008年5月27日 HubbleSite NewsCenter / W. M. Keck Observatory】
木星の「大赤斑」、「中赤斑」の近くに、3つ目の赤斑が出現した。新たに現れた3つ目の赤斑と大赤斑は、このままいけば8月に最接近する。
木星の赤斑といえば、白斑が2005年末から赤みを帯びて誕生した「中赤斑」が注目された。その中赤斑や大赤斑に並ぶように、新たな赤斑が現れた。3つ目の赤斑は、大赤斑の西側にあり、ほぼ同じ緯度に位置している。
新しい赤斑は、元々白い楕円形の嵐だった。赤くなったのは、嵐の勢いが強くなって雲の下から物質が巻き上げられ、太陽の紫外線を受けて化学変化を起こしたためと考えられている。つまり、渦巻く雲の高さが大赤斑の雲と同じ高さにまで上昇したことを示している。
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が5月9日と10日にとらえた可視光画像と、5月11日にケック望遠鏡がとらえた近赤外線画像の分析から、3つの赤斑の雲の高度が調べられた。いずれの雲も近赤外線で明るいことから、木星のメタンの雲よりも高く位置していると考えられる。メタンは、太陽の赤外線を吸収するからだ。
また、両望遠鏡が今までに行ってきた観測で、1年ほど前から大赤斑の周辺で雲の動きが激しくなり、木星の縞模様をつくっている帯の色にも変化が現れているようすがとらえられている。最近では、中赤斑の色があせ、大赤斑は赤黒くなってきている。
流体力学の専門家である米・カリフォルニア大学バークレー校のPhilip S. Marcus教授は以前、木星で2006年ごろ大規模な気候変動が起こることを予測した。その内容は、木星の南半球で気温が10度ほど上昇してジェット気流が不安定となり、新しい嵐が発生するというものだ。
Marcus教授は、「木星の気候変動によるものかどうかはわかりませんが、過去2年半にわたる雲の動きは、大規模で通常と異なる何かが起こっていることを示しています」と話している。
3つ目の赤斑と大赤斑は、このままいけば8月に最接近する。小さい方が大きい方に吸収されるのか、反発し合うのかはまだわからない。なお、中赤斑は、6月に大赤斑とすれ違う。
木星の見どころ
望遠鏡の倍率を100〜200倍ほどに上げると、木星本体の縞模様が見えてくる。見える本数は天体望遠鏡の口径によって異なるが、8cmで4本程度。木星最大の見どころは、赤い目玉の「大赤斑」。これは口径8cmでも確認できる。ただし、木星は10時間足らずで自転しているので、大赤斑がいつも見えるとは限らない。(「DVDではじめる天体観察入門」より)
なお、小赤斑を簡単に見分けるには口径20cmほどの望遠鏡が必要です。