太陽50個分の大質量星、最期の姿は意外に地味

【2010年10月18日 NASA JPL

太陽の50倍ほどもある大質量の星が一生を終えて大爆発を起こした。しかしその姿は華やかな普通の超新星とは異なり、大量のちりに包まれた実に地味なものだった。初期宇宙ではこのような現象はありふれていたと考えられているが、観測されたのは初めてのことである。


(爆発前の質量が太陽の50倍ほどと計算された超新星の想像図)

爆発前の質量が太陽の50倍ほどと計算された超新星の想像図。クリックで拡大(撮影:NASA/JPL-caltech/R/Hurt(SSC/Caltech))

オハイオ大学の研究チームは、NASAの赤外線天文衛星スピッツァーによるサーベイ観測のデータから活動銀河核の研究を行っていた。活動銀河核とは、銀河中心に存在すると考えられている超巨大ブラックホールの活動によって強いX線や電波など大量のエネルギーを放射している天体である。この高温部分の温度変化を調べることによって、ブラックホールへ落ち込む物質がどのように変化するのかに関する情報を得るのが目的であった。

通常、このような観測では超新星の発見は期待されていない。なぜなら、超新星はほとんどのエネルギーを熱ではなく光として放出するからである。しかし、活動銀河核に見られる典型的な熱放射と一致しない高温部分が1か所だけ、地球から約30億光年離れた銀河に発見された。ケック望遠鏡で可視光スペクトルを調べてみても、活動銀河核の存在は示されなかった。

天体からの熱は6か月以上放射され続けたあと、2008年3月の上旬に消え去った。この観測的な事実が、同天体が超新星である証拠の1つとなった。当時オハイオ州立大学の研究者だったSzymon Kozlowski氏は「この天体は6か月以上かけて、わたしたちの太陽が一生かかって生成するエネルギーを放出しました」と話している。もしこの天体が超新星なら、そのエネルギーは「極超新星(超新星より大きな爆発)」によって放出される量に相当するという。

同天体の温度は摂氏700度ほどで、金星より少し高い程度だ。多くの光エネルギーは一体何に吸収され、熱として消散したのだろうか。その答えは大量のちりの存在にある。

研究チームによって発見された天体の質量は、太陽の50倍ほどと計算された。これほど質量が大きな星は、一生の終わりが近づくとちりを噴出するのが普通だが、この星は少なくとも2回ほどちりを放出したはずだと結論づけられている。1回目は超新星爆発の300年前、2回目はたった4年前に起きたという。

星から放出されたちりとガスは星のまわりに外層として留まり、ゆっくりと外側に拡がっていくが、この天体の場合には内側にもう1つ層が存在する。これが4年前に放出されたガスやちりで、星本体にかなり近い場所に存在していると考えられている。一方、300年前の放出でできた外層は、星からははるかに離れた場所にあるはずである。

オハイオ州立大学のChristopher Kochanek教授は「外層はほぼ不透明なはずですから、そこで内層を通り抜けた光のエネルギーが吸収され熱に変換されたのです」と話している。またKrzysztof Stanek教授は「ずっと昔に宇宙に存在していた星は、窒息するほどの大量のちりに包まれていたのかもしれません」と推測している。

なお、地球から比較的近い場所でも、似たような現象が少なくとも1回は見られるかもしれないということだ。Kochanek氏によると、地球から約7500光年の距離に位置しているエータカリーナ星雲が超新星爆発を起こせば、今回と同様の状態が観測されるかもしれない。