たったの100度 星の低温記録を更新
【2011年3月25日 ヨーロッパ南天天文台】
これまで知られている中で最も低温の星が発見された。約75光年先にある褐色矮星で、その表面温度はたったの100度ほどだという。
夜空に光る星は、空間に漂うガスやダスト(塵)などの物質が集まり、中心部の温度が上昇して核融合を開始することで誕生する。膨大なエネルギーを放つ私たちの太陽も同様で、その表面温度は摂氏約5500度、これでも恒星としてはやや低いぐらいである。
だが、このたび発見されたのは、表面温度が摂氏100度という私たちの生活にも身近な温度の星だ。これは地球から約75光年の距離にある褐色矮星の連星系(注1)の1つで、「CFBDSIR 1458+10B」と呼ばれる。褐色矮星とは、質量が小さいために核融合ができず、恒星になりそこねてしまった星のことだ。
この連星系が昨年発見された時には低温の単一の星と思われていたが、米・ハワイにあるケック天文台の「ケックII望遠鏡」により2つの星からなる連星であることが判明し、そのうち暗い方はさらに低温であることがわかった。
研究チームのMichael Liu氏(米・ハワイ大学天文研究所)は「今回発見されたものぐらい低温だと、褐色矮星というよりむしろ巨大なガス惑星に近い性質を持っているかもしれません。大気に水の雲が存在する可能性もありえます」と語るが、ここまで来ると「小さく低温の恒星」なのか「大きく高温の惑星」なのか、境界があいまいになってくる。Liu氏らは今後もこの連星の軌道や質量などを調査し、研究を続けていくという。
また、さらに低温の可能性がある星がNASAのスピッツァー赤外線天文衛星により2つ見つかっており、詳細を確認中とのことだ。
注1:「連星系」 重力で引き合い両者の重心の周りを回る2つ以上の天体のこと。