満月2個分の視野! 広域かつ精密な星の材料の地図が完成
【2011年12月22日 国立天文台】
国立天文台をはじめとする研究グループが、さんかく座銀河(M33)に存在する水素分子や低温の塵の精密な分布図を完成させた。天の川銀河以外でこのような精密な分布が作成されたのは世界で初めてのことだ。
分子ガスは星の材料となるもので、宇宙空間で原子同士が衝突することで形成されるが、特に低温の塵の表面で形成されやすいと考えられている。これらの分子ガスや塵が銀河内でどのように分布しているのか、温度分布はどうなっているのかは、よくわかっていなかった。
国立天文台をはじめとする研究グループは、野辺山45m電波望遠鏡とチリ・アタカマ砂漠にあるアステ望遠鏡を用いて、さんかく座銀河(M33)に存在する分子ガスや低温の塵の分布を調べた。M33は(大型の銀河としては)アンドロメダ座大銀河(M31)に次いで天の川銀河から近い、約270万光年の距離にある銀河で、ほぼ正面を向いているために銀河内のガスの分布を調べる上では最適な銀河である。
観測の結果、星間塵が銀河のほぼ全面に存在しているのがわかった(画像2枚目、緑色の領域)。塵は星(画像2枚目、赤色に相当)と同じように渦を巻いており、その温度も中心から外側に向かって緩やかに低下していることがわかった。このことから、星間塵の温度は銀河内にばらばらに存在している大質量星によって決定されるのではなく、実際は中心から外側に向かって緩やかにその数が減少している、太陽のような普通の星によって決定されることがわかった。
また分子雲の分布を見ると、太陽の数十倍もの質量を持つ巨大分子雲の塊として多く存在していることがわかった(画像3枚目左側)。さらに、水素ガスの中で水素が分子として存在する比率を調べると、銀河の中心付近のほうが比率が高いことがわかった(画像3枚目右側)。これは元素の分布や円盤の厚みによって、銀河の中心部の方が分子を形成しやすいためだと考えられる。
今回得られた星の材料の地図は、星間物質から星が形成される一連のプロセスを理解する上で非常に重要な手がかりとなりそうだ。一方で、分子雲や星間塵の中で星が形成されていく具体的なプロセスは未解明のままである。研究チームは今後、アステ望遠鏡やアルマ望遠鏡を用いて分子雲の観測などを行い、星間物質から星がつくられるまでの統一的な描像を明らかにすることを目指している。