ISSで新種の地球外物質を回収

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【2012年9月4日 JAXA

ISSの実験装置により宇宙空間で捕獲された粒子に、これまで見られなかった組織と鉱物組成を持つものが見つかった。この地球外物質は「Hoshi」と名付けられた。未知の鉱物学的特徴を持つ始原的な地球外物質が存在していることを示す大きな手がかりとなる。


ISSに取り付けられた粒子捕獲装置

ロシアのサービスモジュール「ズヴェズダ」と、その外部に搭載されたMPAC&SEED実験装置。クリックで拡大(提供:JAXA)

シリカエアロジェル内の光学顕微鏡写真と「Hoshi」の拡大写真

シリカエアロジェル(捕獲用素材)内の光学顕微鏡写真(断面図)と捕獲された「Hoshi」の拡大写真(断面の電子顕微鏡像)。クリックで拡大(出典:Earth and Planetary Science Letters 309 (2011) 198-206)

今回発見されたのは、国際宇宙ステーション(ISS)に取り付けられた微小粒子捕獲装置から2005年に回収された、大きさ30μm程度の微小粒子だ。装置を開発したJAXAと茨城大学(野口高明教授)との共同研究による分析の結果、以下のようなことがわかった。

  • 始原的な隕石を特徴付けるコンドルール様物体(注1)であるものの、含まれる硫化鉄は、既知のコンドルールに見られない鉱物学的特徴を持つ
  • 含まれる鉱石(カンラン石や輝石)の酸素同位体比(注2)が、これまでに地上や大気圏で得られた惑星間塵、微隕石や、探査機「スターダスト」がヴィルト彗星(81P/Wild)から持ち帰った塵に似ている

この両者の特徴を兼ね備えた物質はこれまで発見されておらず、今までに知られている地球外物質とは違う小天体起源の物質と考えられる。惑星間塵や微隕石に「Hoshi」と似た鉱物学的特徴が見出されていないのは、大気圏通過時あるいは地上における分解・風化が原因という可能性がある。

「微小粒子捕獲実験及び材料曝露実験」(MPAC&SEED)では、今回のような微小粒子を捕獲する試みのほか、宇宙環境で利用される材料を曝して耐性を調べる実験も行われている。「Hoshi」が捕獲されたのはロシアのサービスモジュール「ズヴェズダ」に取り付けられた装置からだが、その後「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに搭載され、2010年に試料が回収されている。捕獲された粒子について分析が進められており、今後も太陽系誕生のなぞに迫る新たな発見が期待される。

注1:「コンドルール」 太陽系が誕生して間もない頃の情報を多く有していると考えられている球状粒子のこと。多くの隕石中に見られ、地球の岩石には見られない特徴的な粒状構造を有している。また、コンドルールによく似ているが、彗星塵に含まれる、大きさのずっと小さな物体をコンドルール様物体と呼ぶ。

注2:「同位体比」 同じ元素の原子でも、中性子の数の違いで質量が異なるものがある。含まれる割合から鉱物を特徴づけることができる。