スウィフトが発見、天の川銀河の新たなブラックホール
【2012年10月9日 NASA】
NASAの天文衛星「スウィフト」が、X線で急激な増光を見せる天体を天の川銀河内に見つけた。今まで知られていなかった、新たな恒星質量ブラックホールが存在しているようだ。
「明るいX線新星はとても珍しく、ほぼ1回限りのイベントに近いです。『スウィフト』にとってはこれが初めての発見です。我々はこの発見を待ち望んでいました」(NASAゴダード宇宙飛行センターのNeil Gehrels氏)。
X線新星とは持続時間が短いX線源のことで、突然現れて数日でX線の強さがピークに到達し、数か月かけて弱まっていく。このようなX線のアウトバースト(突発的な爆発)は、ガスの塊が中性子星やブラックホールといった高密度天体に急速に吸い込まれるときに発生する。
スウィフトのバースト警報望遠鏡は、X線源の急激な増光を9月16日に2回、翌日の17日に1回感知した。「スウィフトJ1745-26」と名づけられたこの新星は、いて座の方向にある天の川銀河の中心からわずか数度離れたところに出現した。距離はおそらく2〜3万光年先と思われる。
9月18日、この新星は1万電子ボルト以上の硬X線でピークに達した。そのエネルギー強度は、高エネルギー観測の測定基準として使われる超新星残骸かに星雲(M1)に匹敵するもので、硬X線の高エネルギー天体としては観測史上もっとも明るい部類だという。
硬X線は徐々に弱まってきているが、比較的低エネルギーの軟X線では発見当時より30倍も明るく、今も明るさが増してきている。このような変化はX線新星の典型的な現象だ。
「こうしたパターンは、中心にブラックホールを持つX線新星のものです。X線が完全に消えた後には、質量を測定してブラックホールの現状を調べたいと思っています」(イタリア・ブレラ天文台のBoris Sbarufatti氏)。
このブラックホールは太陽のような恒星と共に低質量X線連星系(LMXB System)を成していると考えられる。ほとんどのLMXBでは、恒星から流れてくるガスがブラックホール周囲の降着円盤に降り注いでいる。円盤の中ではブラックホールに近づくほど熱くなり、持続的にX線が放出される。
しかしある条件を満たすと、円盤の中の持続的な流れが崩れてしまう。このとき、高温で高電離状態のガスは円盤中心付近に押し寄せられ、反対に低温で低電離状態のガスはダムに溜まった水のように円盤の外縁に累積されていく。数十年経ち、ガスが円盤外縁に蓄積されると、ダムが崩れて溜まっていた大量のガスが一気にブラックホールに吸い込まれ、強力なX線バーストを引き起こす。これがX新星だ。
このようなX線アウトバーストは円盤内の物質を吹き飛ばし、その後、LMXBはX線新星から元の状態に戻る。そして数十年後にまた同じような現象が繰り返され、X線新星が再び現れる。この「熱粘性リミットサイクル」と呼ばれる現象は、原始惑星系円盤や矮新星、遠方銀河の超大質量ブラックホールなど様々な場所で発生する瞬間的アウトバーストを理解するのに役に立つ。