星のペアが織りなす星雲のS字リボン
【2012年11月14日 ESO】
欧州の研究チームによる観測から、きれいなS字ジェットを持つ惑星状星雲「フレミング1」の中心部に、恒星の残骸である白色矮星のペアが見つかった。ジェット構造が作られたメカニズムを解明する有力な手がかりとなる。
惑星状星雲とは、老いて膨張した恒星がその外層を放出して出来たガスのヴェールで、その中心には星の最後の姿である高温高密度の白色矮星が残されている。とりわけ特徴的なのが、ケンタウルス座の方向にある「フレミング1」だ。対称的なSの字カーブを描くジェットを持つが(画像1枚目)、このジェットが形成されたメカニズムについては長らく謎となっていた。
ヨーロッパ南天天文台(ESO)のHenri Boffinさんらが南米チリにある超大型望遠鏡(VLT)でこの星雲を観測したところ、その中心に1.2日周期で互いを公転する白色矮星の連星を発見した。惑星状星雲の中心部で普通の恒星の連星が発見されたことはあるが、白色矮星の連星は非常に珍しい。
Boffinさんによれば、連星かも知れないという説は以前からあったが、お互いの距離が離れた10年以上の長周期のものと思われていて、これほど近接したものだったことは意外だという。
フレミング1の形状が作られた過程について、今回の観測結果から導かれた仮説シナリオによれば、老いて外層が膨張した連星の星のうち一方がもう一方の物質を重力で引き寄せ、その物質が星の周囲の円盤となった。連星の公転運動とともに円盤はぐらぐらと揺れ動き(歳差運動)、その軸に沿って双方向に噴出するジェットがカーブを描いたという(画像2枚目/動画)。
この研究で、連星系の星周円盤の歳差運動によりフレミング1のような対称パターンが形成されることがはっきりと示された。
VLTがとらえた星雲内部の画像では、ほかの連星系でも見られるような節状のリング構造も見つかっており、連星が存在する証拠の1つとなっている。