地球近傍天体の発見数が1万個に到達

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【2013年6月25日 NASA

地球軌道に近づく小天体(NEO)の発見数が1万個をむかえた。近年は飛躍的に発見数が増えているものの、地球にとって脅威となる天体が発見される可能性はまだ残っており、世界各地で探索が進む。


小惑星2013 MZ5

パンスターズ1望遠鏡で発見された小惑星2013 MZ5(赤い矢印)。恒星を背景とした動きからその存在を知る。クリックで拡大(提供:PS-1/UH)

「地球近傍天体」(NEO)とは、地球の公転軌道に4500万km以内まで近づく軌道を持つ天体のことだ。数mクラスのものから最大では幅41kmの小惑星(1036) Ganymedまで、そのサイズはさまざまである。また、軌道を計算してみると将来地球に衝突し危害を及ぼす可能性を排除しきれていないNEOは特に、「潜在的に危険な小惑星」(PHA)とも呼ばれる。

こうしたNEOの通算発見数が、いよいよ新たな桁に突入した。記念となる1万個目の天体は、米ハワイでの自動小天体サーベイ「パンスターズ計画」により6月18日に見つかった小惑星2013 MZ5だ。幅およそ300mで、将来地球に衝突する危険性はないことがわかっている。

NASA地球近傍天体プログラムのLindley Johnsonさんはこの発見について「重要なマイルストーンです。でも地球にダメージを与えうる天体を全て探しつくしたと言えるには、少なくともこの10倍の数は見つけないといけません」と話す。

発見された1万個の天体のうち、地球全体にダメージを与えうる1km以上のサイズのものはおよそ1割だ。この中には今のところ衝突の危険性があるものは含まれておらず、またこれほど大型で未発見のものは数十個程度だろうという。さらに小さい140mサイズのものは1万5000個あると推測されており、そのうち30%近くが発見済みである。人間の居住地域に甚大な被害を及ぼす下限の30mサイズのものは百万個以上と考えられ、こちらはほとんどが未発見のままだ。

同プログラムを長年率いるDon Yeomansさんによると、NEOが最初に発見された1898年からの100年間での発見数はたった500個ほどだったが、その数が飛躍的に増加したきっかけが、1998年の同プログラムの開始だったという。

NASAによるNEO観測プログラムは、マサチューセッツ工科大学リンカーン研究所の「LINEAR(リニア)計画」、ジェット推進研究所の「NEAT(ニート)計画」、アリゾナ大学のスペースウォッチ(現カタリナ・スカイ・サーベイ)と「LONEOS(ロニオス)計画」(ローウェル天文台)との連携支援で始まった。各捜索プログラムでの観測結果が国際天文学連合(IAU)の小惑星センターに報告され、符号の付与と軌道計算が行われる。

立ち上げから10年あまりで、同プログラムは1km以上のNEOの90%を見つけるという目標を達成した。さらに2005年12月には米連邦議会から、140m以上のNEOの90%を発見・カタログ化するよう要請が出された。これが達成されれば、前触れなしに天体衝突が起こる確率を、サーベイ計画実施以前のレベルの1%まで絞り込める。衝突の危険性が事前にわかれば、最新の技術で対策を講じる余地があるので、人類へのリスクを減らすことができるのだ。

小惑星センターのTim Spahrさんが小天体のサーベイ観測に携わりはじめた1992年ごろ、NEOの発見はまだまれな出来事だったという。「それが現在では、1日に3個のペースで発見されています。NEO以外の、小惑星帯にあるものも含めて月およそ数十万個もの天体観測報告が小惑星センターに寄せられます。NASA中心のサーベイ以外にも、世界中の研究者・アマチュア天文家の活躍がNEOの発見追跡にひじょうに大きな貢献をもたらしています」。