宇宙線と高速中性原子から描かれた星間磁場の姿が一致
【2014年2月18日 NASA】
米大学のシミュレーション研究で、観測された高速中性原子の分布から描き出された太陽圏周辺の星間磁場が宇宙線の観測結果と一致した。太陽圏とその外界を隔てる境界域の姿が、さらにくっきりと浮かび上がる研究内容となっている。
太陽系を包み込む太陽圏(ヘリオスフィア)は、太陽から放出されるプラズマ粒子の流れ(太陽風)に満たされたバブル状の構造だ。2012年にNASAの探査機「ボイジャー1号」が人工物として初めてその境界から外に飛び出した。
ボイジャーが太陽圏の外で星間空間の環境を直接観測する一方で、地球を周回しながら太陽圏辺境を全体的に観測するのが、衛星「IBEX」だ。IBEXは、太陽圏境界で起こる相互作用によりプラズマ粒子が高速中性原子(ENA)に変わり、まっすぐ飛来してきたところを検出する。もともとのプラズマ粒子の動きは辺境の磁場に影響されるので、高速中性原子を観測すれば太陽圏外の磁場のようすもわかる。
米・ハンプシャー大学ダーラム校のNathan Schwadronさんらは、IBEXの観測をもとに太陽圏外の磁場マップをコンピューターシミュレーションで作成した。さらに、宇宙線(星間空間を飛び回る高エネルギー放射線)が全方向から一様にやってくるとして、宇宙線がその磁場に沿って迂回した結果どのように観測されるかをシミュレーションしたところ、実際に観測される宇宙線の分布と一致していた(画像2枚目)。
この一致により、IBEXの観測から得られた磁場マップの確実性が高まった。また元来の謎だった、宇宙線の不均一な分布(太陽圏の移動方向よりもその反対側から多く飛来する)も、太陽圏周辺の星間磁場によるものかもしれないというヒントも得られた。
一方で、新たな謎も出てきている。この研究で確かめられた星間磁場の方向が、ボイジャー1号の観測と食い違うのだ。Schwadronさんによれば、計測方法が全く違うためどちらが間違いというものではなく、この不一致が太陽圏周辺をさらに詳しく知るためのヒントになるとのことだ。