20日未明、サイディングスプリング彗星が火星と超ニアミス

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日本時間20日未明、サイディングスプリング彗星(C/2013 A1)が火星のそばをわずか14万kmで接近通過する。月から地球までの距離の半分以下という超大接近で何が起こるのか、火星探査機による観測のほか地上の天体望遠鏡でも追ってみたいイベントだ。

【2014年10月16日 NASA

2013年1月に発見されたサイディングスプリング彗星(C/2013 A1)が、いよいよ19日18時27分(世界時。日本時間20日3時半ごろ)に火星を最接近通過する。14万kmまで大接近する彗星を、火星で活動中の探査機たちも観測する。

火星から見るサイディングスプリング彗星の接近通過
火星探査車「キュリオシティ」の着陸地点から見た彗星の接近通過を1時間おきにアニメーション。淡い彗星の姿がどのようにとらえられるかは未知数だが、すぐそばを猛スピードで通過していくようすがわかる(「ステラナビゲータ」でシミュレーション)

太陽系の果ての「オールトの雲」からやってくるこの彗星が太陽系中心部を訪れるのは、今回が最初で最後とみられている。こうしたオールト雲由来の彗星は周期彗星のように何年も前から準備して探査機を送りこむことができないので、間近でとらえるチャンスはひじょうにまれだ。彗星観測に適しているわけではない探査機たちも、その観測性能を最大限に活かして彗星のコマや尾を調べる予定となっている。

当初は彗星から放出された塵が火星に大流星雨をもたらすかもしれないと期待されていたが、彗星軌道の精度が上がるにつれて、塵はほぼ火星大気に届かない可能性が高くなってきた。それでも火星上空を周回する探査機たちは念のため、塵衝突の危険性が最も高くなる時間帯(最接近の1時間半後から20分間)に火星の陰に位置するような軌道をとる。火星には薄いながらも大気があるので、地表にいる探査車たちに塵がぶつかる心配はない。

10月から11月初めまでの火星とサイディングスプリング彗星の動き
10月から11月初めまでの火星とサイディングスプリング彗星の動き。クリックで拡大(星ナビ11月号より)

サイディングスプリング彗星は現在、日没後の南西の空で火星に刻々と近づいている。16日には火星から東に角距離3度の位置で、1日に1度ずつ迫る。最接近時刻前後には日本からは見られないが、19日の夕方には20分角(満月の3分の2程度)まで接近する。11等台の明るさだが、1等の火星の光のすぐそば、しかも日没後の低空で見えるかどうか。

写真撮影にチャレンジするなら、超望遠レンズか望遠鏡の直焦点で拡大して撮影してみよう。火星が明るくなりすぎないように短い露出時間で何カットも写したものを比較明合成すると、彗星の姿が浮かび上がってくるかもしれない。火星を通過した後は、いて座の散光星雲も含めたスリーショットを狙うのも面白い。

10月8日撮影のサイディングスプリング彗星
10月8日撮影のサイディングスプリング彗星。クリックで投稿ギャラリーページへ(撮影:門田健一)

詳しくは発売中の「星ナビ11月号」で

発売中の「星ナビ11月号」の「ビジュアル天体図鑑」「11月の注目」コーナーで、サイディングスプリング彗星や火星との大接近について詳しく掲載しています。

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