褐色矮星の軌道を観測し、質量を直接算出

このエントリーをはてなブックマークに追加
ケック望遠鏡による観測で、約61光年彼方の褐色矮星が検出された。年齢や組成だけでなく、これまでは理論モデルに頼っていた褐色矮星の質量も、軌道の観測から直接求められた。

【2015年4月7日 University of Notre Dame

褐色矮星は質量が小さく、天体の中心で核融合反応によるエネルギーを生み出すことができない天体である。惑星と恒星の中間的な存在といえ、天体の進化を調べるうえで重要な対象だが、研究は非常に難しい。持続的な核融合反応が起こらないため、明るさがどんどん失われていくからだ。

米・ノートルダム大学のJustin Creppさんたちの研究チームはケック望遠鏡による観測で、くじら座の方向61光年彼方の7等星HD 4747の周りを回る褐色矮星「HD 4747 B」を発見した。HD 4747には、過去18年に及ぶ精密なスペクトル観測から伴星の存在が示唆されていた。

褐色矮星HD 4747 B
褐色矮星HD 4747 B(中央下の光点)。中心の十字の位置に中心星のHD 4747があるが、星の光を隠して観測しているため黒くなっている(提供:Justin Crepp (University of Notre Dame) et al., Keck Observatory)

この連星系で、中心星と褐色矮星が同時に同じ材料から作られたと考えれば、褐色矮星の年齢や組成を推測できる。また、直接観測で軌道がわかれば、質量も求められる。とくに、これまで質量は理論的な進化モデルを使って計算されてきたので、観測から質量が求められればモデルを検証することができる。

軌道の分析から、HD 4747 Bの質量は木星の約60倍と計算された(核融合反応を起こすには木星の80倍の質量が必要)。これは、理論的な見積もりである木星の72倍という値をかなり下回っている。計算には数パーセント程度の誤差はあるものの、理論モデルの検証と改良、さらに系外惑星のモデル構築にも役立つ研究成果となりそうだ。