17世紀に目撃された現象の正体は、白色矮星と褐色矮星の衝突
【2018年10月16日 キール大学】
1670年7月、はくちょう座の頭のあたりに突然、北斗七星の星々と同じくらい明るい新天体が出現した。この天体は徐々に暗くなった後に再増光し、さらにその後は肉眼で見えないほど暗くなった。現在この位置にはコンパクトな天体があり、その左右には塵とガスでできたリング状の構造が見られ、砂時計のような形をしている。
この天体「こぎつね座CK星」が明るくなったのは、普通の新星爆発ではなく、恒星同士の衝突によるものらしいと考えられている(参照:「星同士の衝突でまきちらされた放射性元素を発見」)。しかし、どういった種類の星が衝突したのかについては、はっきりとはわかっていない。
英・サウスウェールズ大学のStewart Eyresさんたちの研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、砂時計の形に広がった塵を通して届く背景の星からの光を観測した。このような方法によって、塵構造にどんな物質が含まれるかを調べることができるのだ。観測ではリチウムが検出されたほか、炭素、窒素、酸素の同位体の存在比も異常な値を示した。
この結果から研究チームは、こぎつね座CK星が明るくなった現象の正体は、白色矮星と褐色矮星の衝突らしいと結論付けた。白色矮星とは太陽のような比較的軽い恒星の一生の最期の姿である。一方の褐色矮星は、質量が軽すぎるために核融合反応でエネルギーを生み出して恒星として輝くことはできない天体である。
「白色矮星は褐色矮星の約10倍ほど質量が大きかったと思われます。褐色矮星は白色矮星に向かって落ちていきながら、強い潮汐力で引き裂かれていったはずです。そして、2つの星が衝突し爆発した際に、様々な分子や同位体元素が放出されたのです」(米・アリゾナ州立大学 Sumner Starrfieldさん)。
「こうした分子が検出され、どのように周囲に広がっていくのかを観測することで、この現象の真の起源に関する確固たる証拠が得られます。このような現象が決定的に確認されたのは初めてのことです。砂時計の部分にはホルムアルデヒド(H2CO)やメタノール(CH3OH)、ホルムアミド(NH2CHO)といった有機分子が豊富に含まれていますが、こうした物質は核融合反応が進む環境で生き残ることはできないと考えられていますから、爆発の残骸の中で形成されたはずです。これは、褐色矮星と白色矮星が衝突したという結論を支持するものです」(Starrfieldさん)。
〈参照〉
- Keele University:International research team confirms collision of white dwarf and brown dwarf stars
- MNRAS:ALMA reveals the aftermath of a white dwarf - brown dwarf merger in CK Vulpeculae 論文
〈関連リンク〉
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