アルマ望遠鏡の重力レンズ画像にゆがみを残した矮小銀河

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アルマ望遠鏡がとらえた重力レンズ銀河「SDP.81」の画像に、かすかなゆがみが隠されていた。そのゆがみを生じさせたのは、約40億光年彼方に潜む暗い矮小銀河のようだ。もし矮小天体の主成分がダークマターだとすれば、理論予測と観測結果の不一致を説明できるかもしれないという。

【2016年4月19日 アルマ望遠鏡

2014年にアルマ望遠鏡によって撮影された銀河SDP.81は、うみへび座の方向117億光年の距離にある。このSDP.81と私たちとの間に別の銀河が存在しており、その銀河の重力が引き起こした「重力レンズ効果」で、SDP.81は「アインシュタインリング」と呼ばれる美しい円弧状の像としてとらえられている。

像のゆがみ具合を調べると、手前にあるレンズ源となっている銀河の性質を探ることができる。米・スタンフォード大学のYashar Hezavehさんたちの研究チームがSDP.81の画像を詳細に解析したところ、その中にかすかなゆがみが見つかった。これは、リングを作り出した銀河とは別の、天の川銀河の1000分の1以下の質量しかない矮小銀河の重力レンズ効果によるものとみられる。

SDP.81のアインシュタインリングと、その中に見られるゆがみのイメージ
手前にある重い銀河(中央青)の重力レンズ効果によってゆがんだ遠方銀河SDP.81(赤い円弧)と、円弧中のゆがみを生み出した矮小銀河(白)のイメージ(提供:Y. Hezaveh, Stanford Univ.; ALMA (NRAO/ESO/NAOJ))

この矮小銀河は手前にある銀河の伴銀河だと考えられているが、その伴銀河の対応天体が光で見えていないことから、主にダークマターで構成される極めて暗い銀河だと推測される。

理論的には、ほとんどの大きい銀河には似たような矮小銀河や伴銀河が存在していると予測されているものの、観測ではそれよりずっと少ない数しか見つかっていない。「この不一致は、ここ20年間の宇宙論における代表的な問題ですが、もしこれら矮小天体の主成分がダークマターだとしたら、この不一致を説明できるかもしれません。また、ダークマターの真の性質を理解するための新たな手掛かりにもなるでしょう」(米・イリノイ大学 Neal Dalalさん)。

今回の研究結果は、大多数の矮小銀河の主成分はダークマターが主成分であり光を発しないために見ることはできないが、実際には存在しているということを示している。「アルマ望遠鏡のパワーを発揮した驚くべき実例です。私たちは今後もアルマが効率よく矮小銀河を見つけると確信しています。次のステップは、より多くの同じような天体を探し、その統計調査をすることです」(Hezavehさん)。

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