1日~2日夜、幻の「ほうおう座流星群」がよみがえる?

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1956年に目撃された「ほうおう座流星群」の出現が、今年再び大西洋付近で見られる可能性が予測されている。日本では厳しい条件だが、1日から2日にかけての夜、南の空を少し気にかけてみるとよいかもしれない。

【2014年12月1日 星ナビ11月号星ナビ12月号

(※)月刊「星ナビ」11月号「News Watch」の記事(解説・佐藤幹哉さん)をWeb用に再構成したものです。

みなさんは「ほうおう座流星群」をご存じだろうか。1956年12月5日、南極の昭和基地を目指して南インド洋上を航行していた南極観測船「宗谷」で、ほうおう座付近を放射点とした見事な流星雨が目撃された。その数は1時間あたり300個にも達したと報告されているが、この年一度しか見られていないこともあり、長い間「幻の流星群」として語られてきた。

1956年、「宗谷」から観測された「ほうおう座流星群」
1956年12月5日、インド洋を南下中の南極観測船「宗谷」から観測された「ほうおう座流星群」のようす(CGイラスト:星ナビ編集部。「星ナビ」12月号より)

流星群の解明には、流星の素となるダストを放出した母天体を知ることが大事である。流星雨が見られた当時から、この候補とされていたのがブランペイン彗星(289P/Blanpain)だ。しかし、この彗星も1819年に一度しか観測されていないため、さらに謎が深まってしまっていた。

ところが、21世紀になって大ニュースが飛び込んできた。2003年に発見された「2003 WY25」という小惑星の軌道を過去にさかのぼってみたところ、ブランペイン彗星の軌道と一致することがわかったのだ。すなわち、小惑星「2003 WY25」はかつて彗星であり、1819年以降の回帰で揮発成分を使い果たした「彗星・小惑星遷移天体」であると推測されるのである。軌道が決定するとダストトレイルモデルによるシミュレーションが行えるようになる。その結果、筆者らは1956年の出現が多くのダストトレイルと地球との接近によってもたらされたことを検証した。ほうおう座流星群の母天体は、確かにこの彗星だったのだ。

そして同様のモデル計算によると、2014年に再びダストトレイルが接近することが判明した。極大時刻は、12月2日8~10時(日本時、世界時では12月1日23時~2日1時)と予測される。極大を好条件で迎えるのは、ブラジルの東部や、大西洋上の地域となりそうだ。

残念ながら日本では昼間であり放射点も地平線下で、観測はできない。極大前後のわずかな流星を何とかとらえられるかどうかという状況だ。極大前後の12月1日と2日の夜、とてもゆっくりとした流星が南の空から流れてくるかどうか、少し気にかけて眺めてみてはいかがだろう。

カナリア諸島で見るほうおう座流星群のイメージ
2014年12月2日午前0時(世界時)、スペイン領カナリア諸島で見るほうおう座流星群のイメージ。クリックで拡大(図は「星ナビ」11月号より)

気になる出現数は、予測が難しい。今回のダストトレイルを作るダストが放出されたのは1900年代初頭であるが、当時に彗星が観測されておらずその活発さは全く不明であるからだ。一方、彗星は昨年に一時的にコマや尾を見せ、今も彗星活動が継続していることがわかった。いろいろな状況を考慮すると、1時間あたり数個〜150個程度と思われるのだが、その予測幅は大きく、実際に観測してみないとわからない。逆の見方をすれば、今年の観測は、当時の彗星活動を知る良い手がかりになるとても重要な観測とも言える。

想定される流星数の変化
理想的な観測条件下で想定される流星数(ZHR)の変化。数本のダスト・トレイルとの接近により、12月2日午前0時(世界時)頃に極大を迎えると予想される。左の縦軸は、今回接近するダスト・トレイルのダストを放出した当時(20世紀初頭)の彗星が、1956年の流星雨のもととなった18世紀後半~19世紀初頭と同じくらい活発である場合の予測数。右はその5分の1で、実際にはさらに少ないこともじゅうぶんに想定される(図は「星ナビ」12月号より)

星ナビ12月号で特集 ~幻の「ほうおう座流星群」ふたたび~ よみがえるフェニックス

星ナビ2014年12月号表紙

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