月の形成時期は従来説よりも1億年古い
【2019年8月5日 ケルン大学】
今から50年前の1969年7月21日(日本時間)、アポロ11号が月面着陸を果たし、人類は初めて月にその一歩を印した。宇宙飛行士アームストロングとオルドリンは数時間の月面滞在の間に21.55kgのサンプルを集め、それらは地球へと持ち帰られた。その後、17号まで続いたアポロ計画で合計380kg以上の月のサンプルが地球へ持ち帰られており、そのサンプルは50年経った今でも、太陽系初期の歴史や地球、月の形成に関する研究の情報源となっている。
独・ケルン大学のMaxwell Thiemensさんたちの研究チームは、これらのサンプルの分析から月の形成年代を探る研究を行った。
月は「ジャイアントインパクト(巨大衝突)」と呼ばれる天体衝突で作られたとする説が有力だ。この説によれば、火星サイズの天体が形成初期の地球に衝突し、飛び散った物質が重力によって集積して月ができたと考えられている。誕生したばかりの月は表面のほとんどが溶けており、マグマの海に覆われていたが、冷えるにつれて様々な種類の岩石となっていく。
研究チームは、月のサンプルに含まれる希少元素であるハフニウム、ウラン、タングステンの関係から、月面の黒い領域を構成する玄武岩を生成するもととなったマグマの融解の様子を調べた。とくにハフニウムとタングステンについて、サンプルの情報と実験室での情報とを合わせた結果から、月は太陽系の誕生から5000万年後には冷えて固まり始めたことが示された。これまでの研究では、月が形成されたのは現在から約44億1000万年前であり、太陽系形成(すなわち地球の形成)から約1億5000万年後と見積もられてきたが、今回の研究はそれを1億年さかのぼり、月は約45億1000万年前に誕生したと結論付けている。
月の年齢を決定することは、月がどのように形成されたのかだけでなく、地球の形成年代や太陽系形成初期に地球がどのように進化してきたのかを知る上でも重要だ。「人類が月という地球以外の世界への第一歩を刻んでから、ちょうど50年という節目に、地球に持ち帰られたサンプルによって、月の進化に関する情報がもたらされました。地球の形成後、最後に起こった惑星規模の大きな現象は月の形成ですから、その年代がわかれば、地球の年齢が最低何歳なのかもわかります」(Thiemensさん)。
〈参照〉
- University of Cologne:Continuing the Apollo legacy: Study shows that the Moon is older than previously believed
- Nature Geoscience:Early Moon formation inferred from hafnium–tungsten systematics 論文
〈関連リンク〉
- アストロアーツ:
- 【特集】アポロ11号月着陸50周年
- 天体写真ギャラリー:月
- オンラインショップ:「アポロ計画 両面ポスター+小冊子 セット」
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