原始惑星系円盤内に見えた滝のようなガスの流れ
【2019年12月11日 アルマ望遠鏡】
惑星は、若い恒星の周りを取り巻くガスや塵でできた原始惑星系円盤の中で誕生する。アルマ望遠鏡などによる観測では円盤内の隙間などがとらえられており、こうした構造は惑星によって作られている可能性が高いと考えられている。
円盤内の隙間の成因や惑星形成を理解するためには、原始惑星系円盤の質量の99%を占めるガスの研究が不可欠だ。アルマ望遠鏡によって昨年行われた観測では、いて座の若い恒星HD 163296の周りの円盤内で公転する一酸化炭素ガスの速度が測定され、円盤内に惑星のような構造が3つ存在することが明らかにされた(参照:「若い星の周りに生まれたばかりの惑星の存在証拠」)。
この観測研究を行った米・ミシガン大学のRichard Teagueさんたちの研究チームは、アルマ望遠鏡による最新の高解像度データを利用して、ガスの速度をさらに詳しく調べた。「高品質なデータを用いて、1方向だけでなく3方向のガスの流れを測定することに成功しました。多方向のガスの動きを測定できたのは初めてです。円盤内のガスは、星の周りを回転したり、星に近づいたり遠ざかったり、円盤内を上下に移動したりしています」(Teagueさん)。
Teagueさんたちは円盤内の異なる3か所で、上層から中層に向かって移動するガスの流れを発見した。若いHD 163296を回る惑星が、円盤中でガスや塵を押しのけて隙間を開けている現象である可能性が高いとみられる。原始惑星系円盤の表層から中層に向かうガスの流れが存在することは1990年代後半から予測されてきたが、実際に観測されたのは今回が初めてだ。
「隙間の上層にあるガスが滝のように流れ込み、円盤内でガスの回転流を引き起こすのです」(Teagueさん)。
「(他の可能性も排除はできませんが)今回とらえられたガスの流れのパターンは独特であり、惑星だけがこの現象を引き起こす可能性が非常に高いといえます」(米・カーネギー科学研究所 Jaehan Baeさん)。
今回の研究で予測された3つの惑星の位置は、昨年の観測・研究結果に対応しており、惑星の位置は中心のHD 163296からそれぞれ約130億km(太陽~海王星の約2.9倍)、約210億km(4.6倍)、約355億km(7.9倍)とみられている。また、惑星の質量は、中心星に最も近いものが木星の半分で、中央の惑星が木星と同等、一番外側が木星の2倍と推測されている。
今回とらえられたようなガスの流れは、生まれたばかりの惑星を検出するのに役立つだけでなく、巨大なガス惑星がどのようにして大気を獲得するのかについての理解にもつながる。「惑星は円盤の中層,星の放射から保護された寒い場所で形成されます。惑星によって引き起こされる隙間は、化学的に活性な円盤の表層からより温かいガスをもたらし、このガスが惑星の大気を形成するだろうと考えています」(Teagueさん)。
「ガスの流れを特徴づけることにより、どのようにして木星のような惑星が生まれるかを理解し、惑星誕生時の化学組成を明らかにすることができます。惑星は形成過程を通じて移動していますから、惑星誕生の場所を追跡するためにガスの流れを利用することができるかもしれません」(米・ミシガン大学 Ted Berginさん)。
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