いて座に今年2個目の新星が出現

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天の川の中心方向、いて座の領域に新星が発見された。

【2020年6月17日 VSOLJニュース

著者:前原裕之さん(国立天文台)

天の川の中心方向に見える星座のいて座の中には、これまでにも多数の新星が発見されてきましたが、6月に入って新たな新星が発見されました。いて座の新星は今年2個目です。

この新星は米・オハイオ州立大学を中心とするAll-Sky Automated Survey for Supernovae(ASAS-SN, "Assassin")のグループによって6月2.26日(世界時、以下同。日本時では15時14分ごろ)に15.3等級の新天体ASASSN-20gaとして発見されました。また、口径30cmの望遠鏡を使って近赤外線でサーベイ観測を行っているPalomar Gattini-IRによっても、6月1.430日にJ-band(波長 1.25μm)で11.2等級の新天体PGIR20dsvとして発見されました。さらに、この天体は5月31.418日には米・パロマー天文台の1.2mシュミット望遠鏡で行われているZwicky Transient Facility(ZTF)によって15.8等に増光した天体ZTF20abdpwstとして検出されていたこともわかりました。この天体の位置は以下のとおりです。

赤経  18h22m45.33s
赤緯 -19°36′02.3″(2000年分点)

確認観測画像
確認観測画像(撮影:清田誠一郎さん)

いて座の新星の位置
いて座の新星の位置。画像クリックで星図拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

天体の分光観測が6月8日にパロマー天文台の1.5m望遠鏡で行われ、水素のバルマー系列に加えて中性酸素の輝線が見られたことから、この天体が古典新星であることが判明しました。また、米・ハワイにある口径3.2mIRTF望遠鏡で行われた近赤外線分光観測によると、P Cygniプロファイルを持つ水素の輝線が見られること、P Cygniプロファイルの吸収成分は輝線成分に対して370km/sほど青方偏移していることもわかりました。

この新星は星間吸収の影響を受けていることもあり、発見された時には可視光線で15等と暗かったものの、発見後もゆっくりと増光を続け、6月14日には13.1等まで明るくなりました。今後の明るさの変化が注目されます。