「はまぎん こども宇宙科学館」プラネタリウムがリニューアル

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横浜市の「はまぎん こども宇宙科学館」のプラネタリウムが12月1日(木)にリニューアルオープンを迎えた。光学式プラネタリウムは大平技研製「MEGASTAR-IIA」が導入され、約12億個の星を投影するギネス世界記録に挑戦中だ。

【2022年12月1日 アストロアーツ】

はまぎん こども宇宙科学館は1984年に開館し、今年で38年目となる。今年1月にはアストロアーツ製デジタル式プラネタリウム「ステラドームプロ」の投影システムがリニューアルされ、コントラストが高く黒が締まった本物の星空に近い星空投影用プロジェクタと、輝度が高くプラネタリウム番組の味を損なわない番組投影用プロジェクタの2系統で運用が始まっている。

デジタル式プラネタリウムに続いて、今回リニューアルされたのは光学式プラネタリウムだ。導入されたのは大平技研製「MEGASTAR-IIA」であり、この最新鋭の機種には2つの「世界」がある。

1つ目の「世界」は、世界最多の恒星数だ。一般的な光学式プラネタリウムが投影できる恒星数は多くても1億個程度に対し、「MEGASTAR-IIA」では12億個にも達する。これには、ヨーロッパ宇宙機関の宇宙望遠鏡「ガイア」による観測データを反映させた、超精密恒星原板「GIGAMASK」の技術が使われている。

リニューアルオープン前日の内覧会では、世界最多恒星数としてギネス世界記録登録に挑戦するプログラムも組み込まれた(ニュース公開時点では結果待ち)。イベントに参加した小学生は「以前のプラネタリウムも見たことがありますが、今日はさらにきれいな星空を楽しむことができました」と語った。

投影の様子
MEGASTAR-IIAが映し出す冬の星空。点灯の瞬間には感嘆の声があがった(撮影:星ナビ編集部、以下同)

2つ目の「世界」は、世界初の新方式による4軸式駆動だ。従来の3軸式では、ある特定の操作をすると動きが不自然になり、スムーズに星を動かすことができない現象が生じた。これを回避するために4軸目を追加したことで、スムーズに星を動かせるようになる。デジタル式プラネタリウムでの地上から宇宙に飛び出すようなシーンでも、光学式プラネタリウムの高精細な星のままで宇宙旅行を楽しむことができる。

今回のリニューアルについて、MEGASTAR-IIAの開発者である大平貴之さん(大平技研 代表取締役)と、甲谷保和さん(はまぎん こども宇宙科学館)は以下のように語った。

「他を圧倒する星の数の代名詞だったMEGASTARが、再び世界トップに立ちました。それは確かに光栄なこと。けれど何より大切なことはこの星空で何を伝えるかだと思います。横浜から世界に、宇宙を見上げる意味を伝え、そして宇宙から私たち人類を振り返って未来の有り様を問いかける波を起こしていきたい。本当の挑戦はまだ始まったばかりです」(大平さん)

「新しいMEGASTAR-IIAは、星空と宇宙のお話しをするために、たくさんの工夫をこらしています。これまでよりも複雑な動きに対応できたり、惑星投影機の配置が変わって座席を増やせたり、デジタル式プラネタリウムのステラドームプロとの親和性も高まっています。数百万人が暮らす横浜の市街地で何千個もの星が見えることは、きっともうないでしょう。星空は技術の進歩とともに失われてしまった環境です。でも、技術の進歩とともに観測技術は高まりました。MEGASTAR-IIAの星々は宇宙望遠鏡ガイアによる観測データを基に緻密に再現されています。たくさんの人がたくさんの星とともに、宇宙を楽しむきっかけになれば嬉しいです」(甲谷さん)

記念撮影
横浜と地球のイメージカラーである青に染められた「MEGASTAR-IIA」と、ギネス世界記録挑戦イベントに参加した方々。(左から)甲谷保和さん、大平貴之さん、中川貴雄さん(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所教授/ギネス世界記録判定員)、的川泰宣さん(はまぎん こども宇宙科学館 館長)、渡部潤一さん(自然科学研究機構 国立天文台上席教授/ギネス世界記録判定員)

なお、2023年3月31日(金)まで「MEGASTAR-IIA」の愛称を募集している。詳しくは専用ページまで。

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