矮新星ふたご座Uが1年ぶりに増光
【2022年12月22日 高橋進さん】
ふたご座U(U Gem)は1等星ポルックスから南に6度ほどのところにある矮新星です。普段はおよそ14等ですが、増光が始まると数日で9等にまで明るくなり、その後ゆっくりと減光していきます。
増光間隔は100~200日くらいですが、最近では2021年12月27日に増光を起こした後は明るくなった様子が観測されていませんでした。ふたご座は太陽の通り道になっているため6月中旬から8月下旬までは観測ができず、その期間に増光があった可能性もあります。矮新星の代表星でもあり人気の天体なので、多くの観測者が増光を心待ちにしていました。
12月14日、神奈川県の堀江恒男さんから、ふたご座Uの増光がVSOLJのメーリングリストに報告されました。13日27時45分に9.5等とのことで、351日ぶりの増光です。
ふたご座Uの増光期間は2週間程度と思われますので、明るい期間は年末くらいまでとみられます。ただ前回の増光からの期間が長いと明るい期間が長くなることもあります。1985年には45日間もの長い増光(スーパーアウトバースト)が起こったこともあります。今回の増光がどれくらいの増光になるのか興味深いところです。ぜひご注目ください。
ふたご座Uの増光メカニズム
ふたご座Uは白色矮星とM型主系列星との近接連星です。伴星のM型星は周期0.177日(4時間15分)で公転していて、その表面から主星の白色矮星に向かって水素ガスが流れ込んでいます。ただ、そのガスは直接白色矮星に落ち込んでいくわけではなく、白色矮星の周囲に大きな円盤(膠着円盤)を形成します。M型星から流れ込んだガスは降着円盤の中を回転しますが、円盤にガスが多量に溜まると温度が上昇して不安定になります。そしてあるタイミングで円盤中のガスが一気に白色矮星に落ち込んでいき、この時に円盤が明るく輝いて矮新星として観測されるのです。
〈関連リンク〉
関連記事
- 2024/11/13 秋の食変光星、アルゴルとカシオペヤ座RZを観測しよう
- 2024/10/16 まもなく極大を迎えるミラ型変光星さんかく座R
- 2024/10/07 まだ目が離せない、再帰新星かんむり座T
- 2024/07/31 変動を見せるもいまだ爆発せず、再帰新星かんむり座T
- 2024/07/30 極大期をむかえた夏のミラ型変光星、わし座Rとはくちょう座χ
- 2024/07/18 2024年7月下旬 はくちょう座χ星が極大のころ
- 2024/05/28 爆発が近いと予想される再帰新星、かんむり座Tの近況
- 2024/04/26 極大を迎えるミラ型変光星おとめ座Rを観よう
- 2024/03/26 いよいよ近づいてきた、かんむり座Tの80年ぶりの新星爆発
- 2024/03/04 ベテルギウスが減光中
- 2024/01/18 3月の極大に向かって増光中、変光星しし座R
- 2024/01/15 【使いこなし講座】あなたの知らないステラナビゲータ~明るさが変わる星~
- 2024/01/10 2024年の主要なミラ型変光星の光度変化予測
- 2023/11/15 変光が止まったベテルギウス
- 2023/10/27 星座八十八夜 #35 石にされた海の怪物「くじら座」
- 2023/10/11 秋の食変光星、アルゴルとカシオペヤ座RZが見ごろ
- 2023/09/28 まもなく極大を迎える見やすい変光星、わし座R
- 2023/08/18 小嶋さん、原始星の増光現象を発見
- 2023/07/05 爆発が近づいてきた再帰新星かんむり座T
- 2023/06/20 夜明け前のミラを観測しよう