減光を開始したか?変光星おうし座SU

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かんむり座R型変光星のおうし座SUが減光を開始したようだ。本格的減光になれば1日に0.1等くらいのスピードで急激に減光し、5月には約15等まで暗くなるとみられる。

【2023年4月7日 高橋進さん】

変光星の光度変化には脈動や降着円盤など様々な原因があり、分子ガスが恒星を覆い隠す現象もその一つです。2019年から2020年にベテルギウスが大減光を起こして2等星になってしまった原因も、分子ガスの噴出が有力視されています。

こうした減光を見せる変光星の代表とも言えるのが、かんむり座R型変光星です。このタイプの変光星であるおうし座SUが3月下旬に減光を始めたとみられ、今後どのように光度変化を起こしていくか注目されています。

おうし座SUの光度
おうし座SUの最近の光度(VSOLJのデータベースから高橋さん作成、以下同)

今回の減光を最初に指摘されたのは秋田県の佐藤実さんでした。それまでずっと10等程度を推移していたのですが、3月25日に10.35等で「気のせいかやや暗くなりつつあります」、続いて27日に10.52等で「やはり減光ぎみです」、29日に10.59等で「1日に約0.05等ぐらいの減光速度ですね」とコメントされました。その後、他の観測者からも徐々に暗くなっていく様子が報告されたことから、京都大学の加藤太一さんから変光星のメーリングリストVSNETに減光が始まったのかもしれないとの報告がされました。

おうし座SU(SU Tau)の平常光度はおよそ10等ですが、数年に一度くらいの頻度で突然減光を始めて15等くらいにまで暗くなります(ときに19等くらいまで暗くなることもあり、また10年近く減光が起こらないこともあります)。減光時には1日に0.1等くらいというかなり急激なスピードで暗くなっていきます。その後は1年くらいかけながら、ゆっくりと元の光度へと戻っていきます。前回の減光は2021年4月で、約1か月の間に15等まで減光しました。この時の減光スピードは1日に0.16等と、かなり急激な変化でした。

おうし座SUの2021年の光度変化
おうし座SUの2021年の光度変化

減光を引き起こす要因についてはいくつかの説があり、その一つは恒星内部から噴出した炭素のガスが恒星の周囲に塵の雲を作るというものです。今後の観測や研究によって明らかにされていくことと思います。

今回の減光がこれから本格的な減光になっていくのかどうかは、まだわかりません。もしかすると、またすぐに元の明るさに戻っていくかもしれません。今後の変化に注目したいものです。あまり暗くなってしまう前にご覧になることをお勧めします。おうし座SUはオリオンの振り上げたこん棒の先にあり、有名なミラ型変光星のオリオン座Uのすぐ近くです。おうしの南の角先からもたどれます。

おうし座SU周辺の星図
おうし座SU周辺の星図。画像クリックで詳細星図を表示(「ステラナビゲータ」で星図作成)

なお、同じくかんむり座R型変光星のいて座RYが減光を起こしたことを昨年の10月にお知らせしました。こちらは1日に0.3等という急スピードで暗くなっていき、その後はおよそ14等程度を推移しています。この後ゆっくりと復光していくのか、まだしばらくこの状態を続けるのかわかりませんが、観測しやすい時期になってきましたので、観測可能な方はこちらもぜひチャレンジしてみてください。

いて座RYの光度変化
いて座RYの光度変化

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