羽毛のような繊細さ 巨大分子雲「いっかくじゅう座R2」
【2015年8月26日 ヨーロッパ宇宙機関】
冬の大三角のあたりに広がるいっかくじゅう座は、暗い星が多く目立たない星座だが、ばら星雲など美しい天体も見られる。公開された画像は赤外線天文衛星「ハーシェル」がとらえた、2700光年彼方の巨大な分子雲「いっかくじゅう座R2」だ。ガス雲が描く複雑な構造を詳細に見せてくれている。
いっかくじゅう座R2の明るい中心領域には、電離した水素から成る高温のバブル状構造が複数存在する。1万度という高温に熱せられたガスが急速に広がって膨らみ、その後時間をかけて拡がったものだ。ハーシェルの観測で、これらの構造が10万年から35万年かけて成長してきたことがわかった。
この領域には4つのバブル状構造が見られ、それぞれが別々の、高温で大質量の星と関連している。さらに、その構造を包み込むように高密度のガス雲が広がっている。バブル構造内の高温ガスとは対照的に、ガス雲の温度は絶対温度10度ほど(摂氏約マイナス260度)しかない。
〈参照〉
- ヨーロッパ宇宙機関: Feathery filaments in Mon R2
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ宇宙機関: http://www.esa.int/
- アストロアーツ投稿画像ギャラリー: HII領域
〈関連ニュース〉
- HII領域:
- 2014/07/08 - 大輪の花のようなガム15星雲
- 2014/04/17 - 生まれたての星の放射で赤く輝く星雲「ガム41」
- 2014/03/26 - あかり」の赤外線観測でとらえた星間有機物の進化
- 2013/09/19 - 生まれたての星々が輝く、さそり座の「えび星雲」
- 分子雲:
- 2015/05/18 - 「宇宙の恐竜の卵」、アルマが原始巨大星団を発見
- 2014/09/16 - 星の誕生現場にアミノ酸の材料を豊富に検出成
- 2012/09/05 - 天の川銀河の中心部に「ぶたのしっぽ」分子雲
- 2011/11/21 - 星の形成には銀河の磁場が大きな役割?
- 2011/07/13 - 分子雲で水の素となる物質「過酸化水素」を発見
- 2011/02/25 - オリオン座分子雲での誘発的星形成を解明する手がかりを発見
関連記事
- 2024/06/10 ダークマターの塊が天の川銀河を貫通した痕が見つかった
- 2024/06/03 天の川銀河内初、高速ジェットと分子雲の直接相互作用が明らかに
- 2023/09/26 天の川銀河中心の分子雲の距離と速度を精密計測
- 2023/05/23 宇宙ジェットで掃き集められた分子雲
- 2023/02/22 中間質量ブラックホールの証拠?「おたまじゃくし」分子雲を発見
- 2022/06/13 星団から弾かれた星が星雲を広げる
- 2022/03/16 星の誕生が分子雲に影響を与える範囲は狭い
- 2022/03/08 ガスが集まって大質量星になるまでの過程
- 2021/12/03 天の川銀河の最果てに、有機物とともに生まれた星を発見
- 2021/06/17 星が誕生する環境は、銀河内の位置によって異なる
- 2021/04/21 赤ちゃん星は予想外に大食い?オリオン座大星雲の観測で判明
- 2021/03/26 赤ちゃん星を包む惑星の材料は個性豊か
- 2021/03/17 ガス雲の衝突が星団を作る
- 2021/03/03 連星の誕生、星の種が分裂している場面を初めて観測
- 2020/08/27 宇宙空間でコマのように回転する有機分子を多数発見
- 2020/03/18 天の川銀河外縁部の分子雲衝突候補天体の距離を精密測定
- 2019/07/31 星の生産工場はとても希少
- 2019/02/19 ガス雲を振り回す野良ブラックホール
- 2018/06/28 分子雲の衝突で形成されたオリオン座大星雲の巨大星
- 2018/06/06 野辺山観測所レガシープロジェクトの2014-2017期のデータリリース