銀河団9000個を解析、銀河団内部構造と周辺のダークマターに深い関係

このエントリーをはてなブックマークに追加
約1000万個もの銀河カタログから得られた銀河団のサンプル約9000個を解析することで、銀河団の内部構造と周辺のダークマター分布の間に関係があることが世界で初めて明らかにされた。

【2016年1月26日 カブリIPMU

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のSurhud Moreさん、高田昌広さん、NASAジェット推進研究所/カリフォルニア工科大学の宮武広直さんらから成る研究グループは、光では直接見ることができない銀河団内および周辺のダークマターの分布を調べるために、重力レンズ効果の測定結果を用いた研究を行った。

宮武さんたちは、全天の約4分の1の天域にわたるスローン・デジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)で観測された約1000万個もの銀河カタログから約9000個の銀河団サンプルを選び、銀河団内の構造に着目して銀河団を2つのサンプルに分けた。銀河団に属する銀河が、各々の銀河団内で中心に集中して分布しているか、あるいは広がって分布しているかという指標に基づく分類だ。

そのうえでまず、銀河団が背後の銀河に及ぼす重力レンズ効果の測定から、どちらのサンプルの銀河団も同じ質量を持っていることを示した。

一方、銀河団周辺の重力レンズ効果と銀河団の空間分布の両方から、両サンプルの周辺の約1億光年にわたるダークマター分布の総量を調べてみると、銀河が中心に集中している銀河団ではダークマターが少なく、銀河が広がって分布している銀河団では多いことがわかった。その量は2つのサンプル間で約1.5倍も異なる。

天球上における銀河団の分布の地図
天球上における銀河団の分布の地図。銀河が中心に集中している銀河団の周辺は、ダークマターの分布総量が少なく銀河団分布密度の凸凹も少ない。銀河が広がって分布している銀河団の周辺は、 ダークマターの分布総量が多く銀河団分布密度の凸凹も大きい。クリックで拡大(提供:Sloan Digital Sky Survey, Kavli IPMU)

この結果は、銀河団の質量が同じでも、約100万光年程度のスケールである銀河団の内部構造の特性によって約1億光年のスケールに及ぶダークマターの分布に違いが生じていることを示している。従来、銀河団の個数密度や空間分布などの特性は、銀河団の質量によってだけ決まると考えられていたが、138億年の宇宙の構造進化の歴史における銀河団の形成史と、銀河団周辺のダークマターの分布といった周辺の大規模な環境の影響を受けていることが、今回の研究で明らかにされたのである。

「宇宙論の研究者は長い間、銀河団の特性がその質量だけで決まっているという、単純な理論にとらわれていましたが、今回の結果はこの理論を覆すものです。銀河団の周辺の環境も、銀河団の特性の決定に重要な役割を果たしているという結果を得たのです。天文学者はこの複雑な状況の証拠を長年探し続けてきましたが、今回の結果は世界初の決定的な発見になりました」(プリンストン大学/カブリIPMU David Spergelさん)。

関連記事