国立天文台のALMA(アルマ)計画の近況

【2005年12月14日 国立天文台 アストロ・トピックス(169)12月19日更新

国立天文台が進めているALMA計画の近況報告をご報告します。最新情報については ALMAのホームページ: http://www.nro.nao.ac.jp/alma/をご覧下さい。


<近況報告>

すでにALMAニュース2005年夏号で予告しましたが、熊本大学の佐藤毅彦(さとうたけひこ)氏を中心とするグループが開発した星座カメラ「i-CAN」の一つがALMAの山麓施設(標高約2900メートル)に設置され、このたび調整を終えて本格運用の運びとなりましたのでお知らせします。

星座カメラ「i-CAN」はいわゆる「望遠鏡」というよりは「(インターネット経由で上下左右に遠隔操作できる)高感度ウェブカメラ」です。対角線方向に70度の画角を持ち、肉眼で星座を観察するのに近い感覚を実現しています。多くの星座は一つ以上をまるごとすっぽり収めることができ、星座どうしの位置関係などもよく分かります。これを学校の授業などに取り入れれば、日本とALMA山麓施設(西経68度)との経度の違い(東経135度の明石との経度差203度は約13時間半の遅れに相当)を利用して昼間の授業中の星座観察が可能となります。また、日本では光害や天候不順のために普段目にする機会が乏しい美しい星空や、日本で見ることのできない南天の天体を自由に見せることもできます。南回帰線のほぼ真下の南緯約23度にあるALMAの山麓施設では、南十字星や大小マゼラン雲など日本ではなじみの薄い南天の天体を見ることができますし、天の川(銀河系)の中心も、頭の上までのぼってきます。現在チリは夏ですが、オリオン座など日本では冬の星座とされている星座が見えます(オリオン座など全て上下が逆さまに見えますが)。また、年間降水量はわずか数十ミリメートルしかないため、曇って星が見えないということもめったにありません。現地の9日未明(日本の同日午後)に行われたファーストライトでも、逆さまのオリオン座や南十字星がよく見えていました。

科学研究費補助金により開発された四つ子の星座カメラは、すでに運用を始めていた長女のヤーキス天文台(アメリカ・ウィスコンシン州)と今回運用を開始した次女のALMA山麓施設に加え、今年度中に南阿蘇ルナ天文台(熊本県)とローズマリー天文台(アメリカ・フロリダ州)にも相次いで嫁入り予定です。さまざまな助成金に支えられ開発・運用していますので、利用は無料です。i-CANの操作は、誰も使っていなければ(世界中の誰でも!)ゲストとしてすぐに始めることができます。しかも映像の閲覧自体はいつでも誰でも可能です。学校の教室や課外活動など教育現場での利用(それを主に期待して作られました)の場合は、事前予約を入れることで確実に利用時間を確保することができます。英語のホームページも整備される予定で、外国の人たちが現地の日中に熊本の星空を観察することも想定しています。ALMAのホームページからもリンクしますので、どうぞALMA建設場所の夜空をお楽しみください。