ハッブルがとらえた木星「小赤斑」の運命
【2008年7月18日 Hubble Site NewsCenter】
7月は木星の3つの赤斑の接近、とくに「小赤斑」と大赤斑の接近が注目されていたが、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた詳細な画像が公開された。私たちはいま、大赤斑という巨大な渦が存在し続けているメカニズムのひとつを目の当たりにしているのかもしれない。
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が木星の3つの赤斑の接近の様子を撮影した一連の画像が公開された。ハッブル宇宙望遠鏡の広視野/惑星カメラ2(WFPC2)が撮影したもので、撮影日は5月15日、6月28日、7月8日。赤斑どうしが接近してどうなるのかが注目されていた。
「小赤斑(Little Red Spot)」は2008年になってから大赤斑とほぼ同じ緯度帯に誕生した赤みを帯びた渦で、「赤斑ベビー」とも呼ばれている。大赤斑の西側から接近し、6月末にはついに大赤斑と接した。そして7月8日の画像では大赤斑の右(東)にまわった様子がとらえたれた。大赤斑を通過する際に渦が大きく変形し、色も薄くなっていることがわかる。この薄い斑点が、小赤斑が生き残ったものであるという証拠は、アマチュアによる観測からも示されている。「小赤斑」はこのたびの大赤斑通過で、なんとか痕跡をとどめたことが確認されたものの、いずれは消えてしまうと予想されている。
大赤斑の南(画像では下)では、ちょうど「中赤斑」もほぼ同じ経度にやってきている。「中赤斑」は2006年に白斑BA(Oval BA)が赤くなったもので、「赤斑ジュニア」とも呼ばれ話題となった。赤くなって以来、大赤斑と同じ経度にやってきたのは今回が2回目。
大赤斑は地球が2個も入るほど巨大な高気圧性の渦だが、なぜ消えることなく渦として存在し続けていられるのだろうか?木星の大気には未解明の謎も多い。私たちはいま、渦の相互作用を目撃した。こうした現象は、大赤斑が少なくとも数百年間も存続しているメカニズムのひとつなのかもしれない。