探査機ディープインパクトがとらえた、ハートレー彗星の吹雪

【2010年11月26日 NASA

NASAの探査機ディープインパクトがとらえたハートレー彗星の画像に、氷の塊が吹雪のように舞っているようすが写っていた。彗星の周りに氷の塊1つ1つがとらえられたのは初めてのことで、その大きさはゴルフボールからバスケットボールほど、氷の総重量は数tとみられている。


(ディープインパクトがとらえたハートレー彗星の拡大画像)

ハートレー彗星の拡大画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UMD、以下同じ)

(テンペル彗星(9P)とハートレー彗星(103P)の画像)

(左)テンペル彗星(9P)と(右)ハートレー彗星(103P)。クリックで拡大

NASAの探査機ディープインパクトは、今月4日にハートレー彗星(103P/Hartley)への接近通過を行い、彗星から噴き出すジェットと特定の地形との関係に迫ることができる詳細な画像を取得した。

接近直後に公開された画像にも、凍った二酸化炭素(ドライアイス)のジェットが彗星の端から噴出しているようすがはっきりと見られた。

彗星の端を拡大した画像(画像1枚目)には、小さな白い点々が写っている。これらは、ゴルフボールからバスケットボールくらいの大きさのふわふわとした氷の塊であることがわかった。氷の総重量は数tほどとみられている。また、まったく異なるプロセスによって彗星の中央部にあるなだらかな領域で水蒸気が発生していることもわかった。

EPOXIミッションの共同研究者で、米・ブラウン大学のPete Schultz氏は「立体画像中、彗星の核の前後に複数の雪の塊がとらえられていて、まるでスノードームを見ているかのような光景でした」と話している。

ディープインパクトの主任研究員で、米・メリーランド大学のMichael A'Hearn氏をはじめとする研究者は、ディープインパクトが得たハートレー彗星のデータと、2005年に行ったテンペル彗星(9P/Tempel)の衝突実験の観測データを比較した。

その結果についてA'Hearn氏は「私たちは、彗星の核を取り巻いているすべての小さな点々を見て驚きました。二酸化炭素のガスによるジェットの周囲に、このように個々の氷の塊1つ1つが見られたのは初めてのことです。これこそ、私たちがテンペル彗星の周囲に探し求め、見つけることのなかったものです」と話している。

この発見は、ハートレー彗星と、テンペル彗星やそのほかディープインパクトがこれまでに観測した3つの彗星とのふるまいの違いを示している。

二酸化炭素はハートレー彗星を理解する鍵である。なだらかな領域とごつごつとした領域とが、なぜ太陽の熱に対して異なる反応を起こしているのか、その理由も説明がつく。それは、彗星内部から水が逃げ出すメカニズムに違いがあるからだ。

観測データによると、ハートレー彗星のなだらかな領域は、テンペル彗星の大部分の表面と同様のふるまいを見せている。テンペル彗星では、表面下から出てくる水蒸気がちりに浸透している。しかし、ハートレー彗星のごつごつした領域は、ドライアイスのジェットによって氷の粒子がばら撒かれているために異なる様相を呈しているのである。

EPOXIミッションの副責任者をつとめる米・メリーランド大学のJessica Sunshine氏は「ごつごつした領域内の一定の場所では、ジェットによって水の氷が吹き飛ばされています。そのため氷と雪が雲のように立ち込めているのです。一方、なだらかな領域の真下では、水の氷が多孔質の物質を通して流れる水蒸気となります。この領域で大量の水蒸気が見られるのは、そのためです」と話している。

彗星で起こっているこの活発な吹雪のような状態が、今後どれほどの間発生し続けるかを決定するには、より詳しい分析が必要とされている。また、彗星の中央部と端の活動の違いは、45億年前に形成されたときの名残なのか、またはより最近の進化の結果なのか、その点についても今後詳しく調べられることになっている。

EPOXIミッション

2005年1月に打ち上げられた探査機ディープインパクトは、同年7月に衝突機を放出してテンペル彗星(9P)へ衝突させ噴出物を観測した(「ディープインパクト計画」)。テンペル彗星(9P)への衝突実験を終えたあと、同探査機は「太陽系外惑星の観測と解析ミッション(EPOCh)」を実施して2008年に終了。続いてハートレー彗星(103P)への接近通過ミッション「ディープインパクト延長探査(DIXI)」を実施。

EPOXIとは、「ディープインパクト計画」後に行われた2つのミッション「EPOCh」と「DIXI」を合体させた略称のこと。探査機名「ディープインパクト」はそのまま引き継がれている。

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