カッシーニと大型望遠鏡で土星の嵐を同時観測
【2011年5月25日 NASA/ヨーロッパ南天天文台】
2010年12月に発見された土星の嵐を探査機「カッシーニ」とヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡が同時に観測し、その詳細な構造を見ることに成功した。この嵐は非常に大きなもので、土星の中の物質移動や風の変化など、様々なものに影響を与えているようだ。
公転周期が30年もある土星は現在、北半球が春を迎えている。その「春の嵐」とも呼べるような現象を、NASAの探査機「カッシーニ」とヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡(VLT)が捉えた。
この嵐は2010年12月に発見され、木星の大赤斑のように直径5000kmもある暗い渦へと成長した。これまで土星の嵐は探査機による電波・プラズマ観測か地上からの太陽光の反射光でしか観測されたことがなかったが、今回初めて熱赤外線による観測が行われ、内部構造や物質輸送など様々なことに影響を与えていることが明らかになった。
嵐が発生しているのは表層から約300kmも深いところで、そこには雷など激しい対流の原因となるような水雲が存在していると考えられる。その嵐が比較的穏やかな上層の大気にたたき上げられているとみられる。
カッシーニは、アンモニアの氷が下から噴き出てきている様子を観測することに成功した。50km以上深いところからかなりの量のアンモニア氷が上層大気に送り込まれているようだ。
VLTでは、赤外線分光装置により複数の波長で土星を撮ることによって、土星の高度ごとの温度分布が観測された。上層大気は通常-130度で安定しているのだが、この嵐の部分ではそれよりも15〜20度も高温であることがわかった。
通常土星の上層大気は安定しており、このような嵐が上層大気にまで影響を与えているというのは研究者にとって驚きであった。この新しい観測結果によれば、嵐はエネルギー輸送や物質輸送、大気の風に大きな影響を与えているようだ。
カッシーニとVLTの共同観測により、土星の嵐の様々な構造が理解できたが、今後も土星の謎についてより多くのことがわかるのではないかと期待される。