ビーナスエクスプレス、金星大気にオゾン層を発見

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【2011年10月11日 ヨーロッパ宇宙機関

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「ビーナスエクスプレス」が、金星大気の上層にオゾン層を発見した。系外惑星での生命の可能性を探る上で大きな助けとなりそうだ。


「ビーナスエクスプレス」と金星

金星大気を通過する星の光を利用して大気を調査する探査機「ビーナスエクスプレス」のイメージ(提供:ESA)

オゾンは酸素原子が3つくっついた分子で、単体では生命にとって非常に有害である。しかし地球では高度10〜50km付近に存在する「オゾン層」が、生命にとって有害な紫外線が地上に降り注ぐのを防ぐという非常に重要な役割を持っている。

火星にも薄いオゾン層が存在していることは、NASAの探査機「マリナー9号」の探査結果から1970年代には既に知られていたが、今回ESAの金星探査機「ビーナスエクスプレス」が金星大気を通過する星の光を利用して、金星にもオゾン層があることを発見した。シミュレーションによれば、太陽光線で二酸化炭素が破壊されてできた酸素原子が風によって夜側に運ばれ、そこで普通の酸素分子やオゾンを形成するようだ。

「この発見は金星の大気化学の理解に大きな一歩となる」と研究を主導したFranck Montmessin氏は語っている。オゾンのような壊れやすい分子が存在していることは、金星大気での化学や大気の循環に制限を与え、その理解の手助けになると考えられる。また、地球型惑星と呼ばれる地球、火星、金星すべてにオゾン層が発見されたことで、この3つの惑星の違いが1つなくなったことになる。

オゾン層の発見は、系外惑星に生命がいるかどうかを確かめる手段として使えるかもしれない。地球には元々オゾン層はなく、初めてオゾン層または酸素が大気中にできたのは24億年前だと言われている。突然酸素ができた理由はよくわかっていないが、オゾンは微生物が作り出した酸素が重要な役割を果たしたと考えられており、系外惑星の大気に二酸化炭素、酸素、オゾンがあれば植物のような生命がいる可能性を指摘する者もいる。

もっとも、火星や金星のオゾンは生命が作り出したものではなく、太陽光により二酸化炭素が分解された酸素から作られたようだ。金星大気のオゾン層は高度100kmのところで形成されており、オゾンの濃さは地球の100分の1から1000分の1と非常に薄い。また、理論によれば生命が誕生するには地球のオゾンの濃さの20%は必要であるが、金星も火星もこの量には届いていない。

いずれにせよ、金星のオゾン層の発見と地球、火星との比較を行っていくことで、地球型惑星に対する理解が進んでいくと期待される。