天王星の自転軸が傾いたのは2回の天体衝突が原因?
【2011年10月12日 Scientific American】
自転軸が公転面に対して横倒しになっている天王星。衛星の動きを含めて現在のような姿になるには、1回の天体衝突では不十分であり、地球サイズの天体が2回衝突することで初めて実現することが、シミュレーション研究によりわかった。この結果は従来のモデルと矛盾する部分もあり、外側を公転する海王星の形成過程と併せてさらなる研究が望まれている。
多くの惑星は公転面に対しておよそ垂直の方向に自転軸が向いており、例えば地球の自転軸は公転面の垂直方向から約23.4度傾いている。例外として、金星は177.4度傾いており(注)、ほぼ逆さまの形に、天王星は97.9度の傾きでほぼ横倒しの形になっている。これら自転軸の傾きの原因として、大規模な天体衝突が有力な候補として知られている。
Alessandro Morbidelli氏は天王星の傾きの原因を調べるため、考えられる様々なシナリオに基づいたシミュレーションを行った。その結果、1回天体が衝突しただけでは衛星の配置が現在の形のようにはならず、地球サイズの天体が2回衝突するというモデルが最も実際の形に近づくことがわかった。
1回だけの大きな衝突で天王星の自転軸を横倒しにした場合、その周囲を回る衛星は天王星の赤道面ではなく、両極の周りを回るという結果になったのだ。
では衛星が完全に形成される前、まだ天王星の周囲に衛星の材料となる塵の円盤が存在する時に1度の大きな衝突が起こった場合はどうか。この場合は円盤も赤道面に移動し、現在見られるような衛星が4つ形成される。ただし、衛星の公転方向は逆になってしまう。
これらを解決するようなシナリオは、天王星の衛星が完全に形成される前の段階で、地球サイズの原始惑星が2回衝突するというシミュレーションによるものであった。また、27.8度の自転軸の傾きを持つ海王星は、1回のジャイアントインパクトによって形成されるというシミュレーション結果も得られた。
もちろんこれらの結果はあくまでもシミュレーションによるものであるため、実際の天王星が少なくとも2回の衝突を経て現在の形になった、ということを直接示すわけではない。
天王星では2回、海王星では1回のジャイアントインパクトが起こっていたとすれば、天体衝突が巨大ガス惑星の形成に大きな影響を与えていたことになる。しかし従来のモデルでは、巨大ガス惑星は微惑星を外に弾き飛ばしながら成長していったと考えられており、今回の説とは矛盾している。実際に何が起こったのか、もっともらしいシナリオを導くにはさらなる研究が必要となりそうだ。
注:「金星の傾き」 なぜ「2.6度」ではなく「177.4度」傾いていることになるのか、という疑問があるかもしれない。これは「ある天体の方位は、その自転方向により東西南北を定義する」ことから来るものだ。金星は太陽系の他の惑星と自転の向きが逆なので、そこから決まる南北方向も逆さまになってしまう。