いびつな超新星残骸と弾き飛ばされた中性子星
【2012年2月10日 NASA】
NASAのX線天文衛星「チャンドラ」が、さそり座の超新星残骸を撮影した。いびつな形状や高速移動する中性子星が、超新星爆発という劇的な現象の神秘を伝えてくれる。
重い星の最期である超新星爆発は、その残骸の観測を手がかりとして詳しい研究が行われる。なかでもNASAのX線天文衛星「チャンドラ」は、12年以上にわたって天の川銀河に点在する超新星爆発を観測してきた。その「チャンドラ」が最近撮影したのが超新星残骸「G350.1-0.3」だ。
この超新星残骸は地球から天の川銀河の中心方向に14700光年離れた、さそり座の領域にある。チャンドラやヨーロッパ宇宙機関(ESA)のX線宇宙望遠鏡「XMMニュートン」の画像には、超新星爆発のあとに残された中性子星らしき天体が見られるが、この天体は残骸のX線が明るい場所からは遠く離れている(画像右側の矢印)。
これは、超新星爆発がX線で明るい箇所を中心として起き、中性子星は爆発の衝撃で弾き飛ばされたことを意味している。観測からの推算通り爆発が600〜1200年前のものなら、中性子星は時速480万kmもの速度で移動していることになる。これは同じように高速で移動している、とも座Aの中性子星の速度とほぼ同じだ(参照:2011/12/15「爆発の跡に見えるバラ」)。
また、多くの超新星残骸は球状に広がっていくことが知られているが、このG350.1-0.3は非常にいびつな形状をしている。赤外線天文衛星「スピッツァー」による画像(画像中青色や緑色の部分)でも同様だ。おそらく周囲にある冷たい分子ガス雲に残骸が広がっていっているためだと考えられる。