銀河団をつなぐ1000万光年の橋
【2012年11月26日 ESA】
欧州のマイクロ波天文衛星「プランク」が、互いに1000万光年離れた2つの銀河団をつなぐ高温ガスの橋の姿をとらえた。
「銀河団と銀河団の間の空間にひそむ物質は今まではっきり見ることができませんでした。しかし『プランク』はその秘密を解くヒントを与えてくれます」(NASAジェット推進研究所のJames Bartlettさん)。
マイクロ波天文衛星「プランク」の主要な目的は、宇宙マイクロ波背景放射、つまり、宇宙最古の光をとらえることだ。
この宇宙マイクロ波背景放射が巨大銀河団などに含まれる大量の高温ガスにさえぎられたとき、その放射のスペクトルがある特定の変化を見せる。プランクは、「スニヤエフ‐ゼルドビッチ効果」(SZ効果)と呼ばれるこの現象を利用して銀河団の検出を行ってきたが、さらに、銀河団と銀河団をつなぐ希薄なガスのフィラメント(繊維状構造)を検出することもできる。
初期宇宙の空間は、クモの巣のように広がった巨大なガスフィラメントで満ちていた。そういった複数のフィラメントが交差する高密度の結び目部分で銀河団が作られる。したがって、銀河団と銀河団の間にもこのガスが存在するだろうと予測されていたが、そのほとんどは未検出のままだ。
今回発見された、銀河団Abell 399とAbell 401をつなぐ高温ガスの橋は、今までの予想を検証できる絶好のチャンスとなった。互いに1000万光年も離れた2つの銀河団をつなぐ橋の存在は、ESAの天文観測衛星「XMMニュートン」のX線データから初めてそれらしきものが見つかり、プランクの観測で確認が行われた。さらにドイツの天文衛星「ROSAT」のX線データとあわせて解析したところ、橋を作るガスの温度は摂氏8000万度程度で、結ばれている2つの銀河団の温度に近いこともわかった。
初期解析の段階では、このガスの橋は、隠れたフィラメントに銀河団のガスが混ざったものと考えられている。さらに詳細な解析と、他の多くの例を見つけることで、フィラメントの詳細が明らかになっていくだろう。