「プランク」が宇宙誕生時の名残りを最高精度で観測
【2013年3月22日 NASA/ESA】
宇宙全体に満ちている「宇宙マイクロ波背景放射」は、宇宙誕生時の名残を伝える微弱なマイクロ波だ。この宇宙マイクロ波背景放射を欧州の天文衛星「プランク」が最高精度で観測した全天マップが発表され、宇宙の年齢や構成割合など、宇宙の歴史に関わる新しい数値が求められた。
欧州の天文衛星「プランク」の観測による初の宇宙マイクロ波背景放射の全天マップが発表された。
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)とは、宇宙誕生からわずか38万年後に放たれた光の波長が伸びて現在マイクロ波として観測されるもので、誕生直後の宇宙に存在したわずかな密度のムラが反映されている。こうしたムラは宇宙誕生直後に起こった宇宙空間の急激な膨張(インフレーション)で大規模に広がり、その後恒星や銀河などの構造が生まれる種となっていると考えられている。
NASAのCMB観測衛星「COBE」や「WMAP」の後を継ぐべく2009年に打ち上げられた欧州のプランクは、従来以上の高い解像度と感度でCMBの全容をとらえた。
1年あまりの観測から得られた今回の観測結果は、大枠では宇宙論の標準モデルを踏襲しているが、モデルでは予測されていなかったエネルギー分布の非対称性や模様も見られた(画像1枚目)。研究者らは今後「この観測結果に一致するようなモデルの構築を目指していく」(英ケンブリッジ大学のGeorge Efstathiouさん)こととなる。
また高精度な観測により、宇宙全体に関する様々な値も新しく求められている。
宇宙の年齢は、これまでより1億年古い138億歳となった。宇宙膨張の加速を示すハッブル定数は、67.15±1.2km/秒/Mpcに。これは、距離が1Mpc(メガパーセク:約326万光年)離れるごとに膨張速度が秒速67.15km大きくなる、ということを表しており、従来の値より遅くなっている。
宇宙の構成に占める物質やエネルギーの割合については、宇宙の加速膨張の元となるダークエネルギーが減り、逆に重力の元となるダークマターの割合が増加している(画像2枚目)。
「プランク」による観測成果の完全版は2014年に発表される見込みだ。