超新星爆発で作られた大量の固体微粒子を直接観測
【2014年1月8日 アルマ望遠鏡】
アルマ望遠鏡による電波観測で、27年前に起こった超新星爆発の跡に大量の固体微粒子が見つかった。多くの銀河で観測される大量の固体微粒子が超新星爆発で作られたことを示す材料となる成果だ。
レミー・インデベトーさん(米国立電波天文台/バージニア大学)らがアルマ望遠鏡を用いて行った観測研究で、超新星1987Aの残骸に大量の固体微粒子(注1)が見つかった。
1987Aは16万光年彼方の矮小銀河「大マゼラン雲」で発生した超新星だ。その名のとおり、わずか27年前の1987年2月に爆発して2.9等まで明るくなった超新星で、現在はその残骸が見えている。こうした超新星爆発のあとでガスが冷えていくと、残骸の中心部で酸素や炭素、窒素の原子が結合し、固体微粒子が作られると考えられている。だが1987Aの爆発500日後の赤外線観測では、ごく微量の固体微粒子しか見つかっていなかった。
今回の観測でミリ波・サブミリ波(電波の一種)を強く発する冷たい固体微粒子が爆発中心近くに密集していることが明らかになり、もともと周囲にあったものではなく、確かに超新星爆発で作られたものであることがわかった(注2)。その質量は太陽の4分の1に相当すると推算される。
爆発中心部にできた固体微粒子は、周囲の星間物質にはね返されて戻ってきた衝撃波で壊されることもある。どの程度の割合で壊されるのかは不明だが、あまり壊されることなく大部分がそのまま宇宙空間に広がっていくのであれば、多くの銀河に観測される大量の固体微粒子は超新星爆発で作られたという直接的な裏付けとなる。これまで超新星残骸で固体微粒子が直接検出された例はなく、多くの銀河に含まれる固体微粒子の起源は謎であったが、アルマ望遠鏡が謎を解く手がかりを与えてくれるかもしれない。
初期宇宙の銀河に含まれる大量の固体微粒子は、その銀河の進化に大きな影響を与える。「固体微粒子の供給源はいくつか考えられていますが、特に初期宇宙ではほとんどが超新星爆発によって作られているはずです。アルマ望遠鏡による観測で、その直接の証拠を得ることができました」(研究チームの一員、英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンの松浦美香子さん)。
注1:「固体微粒子」 宇宙空間に漂う固体微粒子は、地球にも豊富に存在するケイ酸塩やグラファイト(ろうそくから出るすすとよく似た成分)でできている。
注2:「超新星残骸1987Aでの固体微粒子の観測」 超新星1987A周囲では2011年にもハーシェル宇宙望遠鏡の赤外線観測により大量の固体微粒子が見つかっているが、今回初めて、これらの固体微粒子が周囲にもともとあったものではなく、超新星爆発の現場で作られたものということがはっきりわかった。