水生成に必須な分子を惑星状星雲に発見
【2014年6月18日 ESA】
ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星「ハーシェル」による観測で、水生成に必須とされる分子が惑星状星雲に見つかった。
太陽のような星は、数十億年もの一生の最終期になると不安定になって外層を放出する。残された中心核は高温の白色矮星となり、強い紫外線を放射する。この紫外線に照らされた外層が、惑星状星雲となって見える。
惑星状星雲では強い紫外線によって分子が破壊されたり新たな分子の生成が制限されたりすると考えらえてきた。しかし、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の天文衛星「ハーシェル」を使った観測によって、水生成に必須な分子が惑星状星雲に発見された。
オランダ・ライデン大学のIsabel Alemanさんたちのグループでは、11個の惑星状星雲を観測・分析し、3個からその必須となる分子イオン「OH+」を発見した。3つの惑星状星雲に共通するのは、10万度を超える高温の中心星の存在である。
また、スペイン・マドリードにあるCSICのMireya Etxaluzeさんたちのグループは、みずがめ座の方向約490光年の距離にある「らせん状星雲(NGC 7293)」を観測のターゲットにした。らせん状星雲の中心星は、質量は太陽の半分程度だが表面温度は約12万度と太陽(約6000度)よりはるかに高い。
星雲の分子の分布を調べたところ、かつて星から放出された一酸化炭素分子が、強い紫外線に破壊される可能性のある領域にありながらも、とても豊富に存在していることがわかった。一酸化炭素から酸素原子が遊離すれば、酸素と水素が結合したOH+分子イオンが作れるようになる。さらに、紫外線がその生成を妨げるどころか促すのではないかという仮説も考えられている。
これらの観測結果は、惑星状星雲で水生成に必要な分子を発見した初の成果だ。実際に水生成に至るかどうかはまだ不明だが、ハーシェルのプロジェクト・サイエンティストGöran Pilbrattさんは「ハーシェルは、星形成が進む分子雲から太陽系内の小惑星帯に至るまで、宇宙全体にわたり水の存在を調べてきました。そして今回、太陽のような星が終末期にあっても宇宙の水生成に寄与する可能性があることを明らかにしたのです」と話している。