帰還と復興願い、小惑星「富岡町」命名式

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2014年8月13日 高橋進さん】

町民の帰還と町の復興を願って小惑星にその名が付けられた福島県富岡町。福島県郡山市にある富岡町事務所で12日、小惑星の命名報告式が行われた。


文:ダイニックアストロパーク天究館 高橋進さん

小惑星命名報告式

小惑星命名報告式にて、宮本皓一町長(右)と湊正晴・ダイニック専務(左)。クリックで拡大(提供:ダイニックアストロパーク天究館。以下同)

小惑星「Tomiokamachi」の発見画像

小惑星「Tomiokamachi」の発見画像。1992年5月6日、25cmシュミットカメラで撮影。クリックで拡大

福島県富岡町は、2011年3月の大震災で事故を起こした福島第一原子力発電所からおよそ8kmのところにある、人口1万4000人ほどの町です。原発事故により全町民が町外へ避難していますが、みんなが帰還できるよう除染作業が進められています。震災から3年が経ち、多くの被災地では復興に向けてさまざまな取り組みが進められていますが、富岡町はまだ復興を始める前の状況です。

ダイニックアストロパーク天究館は、2013年8月に富岡町の親子111人が滋賀県に来られた時に、滋賀の星空を楽しんでもらおうと星空観察会を行い、それ以来交流が続けられてきました。長期間にわたる避難生活で町への帰還をあきらめる人も出てくるとの話を聞き、みんながひとつの星に思いを集めて富岡町の復興への助けになればと、小惑星に「富岡町(Tomiokamachi)」の名前を付けるよう申請し、今回の命名となりました。

命名されたのは、1992年にダイニックアストロパーク天究館の杉江淳さんが発見した小惑星7021です。およそ10km程度の直径と推定され、4.17年の周期で太陽を回っています。2013年12月に国際天文学連合(IAU)小惑星センターに命名の申請を行い、今年7月12日発行の小惑星回報で命名が発表されました。

命名発表を受けて8月12日、福島県郡山市にある富岡町事務所で小惑星命名報告式が行われました。ダイニック株式会社の天究館担当役員である湊正晴専務より、富岡町の宮本皓一町長に命名報告書が手渡され、さらに杉江さんによる小惑星の解説、命名記念パネルの贈呈などが行われました。

宮本皓一町長からは「復興、復旧には時間がかかるが(小惑星は)希望の星として町民の励みになる」と感謝の言葉を述べられました。最接近しても15等級の明るさで、かなり大きな天体望遠鏡を使っても見るのはなかなか難しい星ですが、除染・帰還・復興へ向けて、この星が町民の皆さんの心をひとつにする手助けになることを祈っています。