今夜は中秋の名月 月の中身はどこまでわかる?
【2014年9月8日 国立天文台RISE/アストロアーツ 中秋の名月特集】
今夜は十五夜、中秋の名月。太古より眺めて楽しむ存在だった月が、ここ半世紀で実際に人類が降り立ち、あるいは無人探査機を送り込んでさまざまなことを調べる場となった。だが月の奥深くがどうなっているのかについては、まだ多くの謎が残されている。
地球の隣の天体でありながら、未だ簡単に行くことは叶わない月。その内部がどうなっているかは、これまでの探査で得られたデータから調べられてきた。
1つは、1960〜1970年代のアポロ計画で宇宙飛行士が月面に設置した地震計で、地震波が伝わるスピードから月内部がどのような物質でできているかがわかる。もう1つは、月を周回する無人探査機の軌道が月の重力に引かれてふらつくようすから月の重力場を計測し、内部に重い物質がどのように分布しているか、どの程度硬いのかを知ることができる。
国立天文台月惑星探査室(RISE)の山田竜平さんらは、これまでのデータから月の内部構造がどの程度までわかるのか、また将来得られるデータからさらにどれだけのことがわかるのかを数値シミュレーションにより評価した。
アポロ計画で得られた地震波のデータと、日本の月探査機「かぐや」が2007〜2009年に得た重力場データを組み合わせた場合、月の浅い部分(地殻から上部マントル)の構造については5〜6%の誤差でわかるが、下部マントルから中心核にかけての深い部分についてはあいまいだ。
そこで、NASAの探査機「グレイル」が2011〜2012年に行った探査と、計画中の日本の月着陸探査機「SELENE-2」による、さらに新しい重力場データを利用することについて考えた。「SELENE-2」では、離れたところで計測したデータを組み合わせる「VLBI」という手法で探査機の軌道を精密に求め、「グレイル」と同様の成果が得られると予測される。今回の研究で、「グレイル」と「SELENE-2」の重力場データ、そしてアポロの地震データを組み合わせることで、特に月の中心核に関しておよそ10%の精度で正確な情報が得られることが示された。
ただし、重力場の探査はあくまで間接的な調査なので、ある仮定に基づいて中心部の構造を推定することになる。月の奥深くを確実に知るには地震波を直接計測する必要があるが、新しい探査機により重力場のデータが更新され続けているのに対し、地震波のデータについては未だアポロ計画で得られたものしかない。将来の探査で地震波をより高精度に観測できるようになれば、まだまだ謎の多い月の内部が明らかになると期待される。